(……そっか。俺、もう蜜穂さんより年上なのか)
ふと、それを思い出した。
「長生きしたなぁ」
呟く。
「親孝行したなぁ」
ついでに、思いつく。
「ここまで長生きしといて、なぁんか今日も生き延びそうだなぁ」
ということは、また今日も、動きまわったり腹が減ったり用を足したり、あれやこれやちょこまかとまめまめしく浮き沈みして苦しまなければならないのだ。多分。まず間違いなく、腹はこれから減るだろうし。昼だから。
「めんどくさいなぁ」
本音である。
本音であることに、また一段とうんざりだ。
「あーあ。死んじゃおっかなー。いや。やっぱ駄目か。死んだら」
と。
自前の携帯電話が、放り出されていた机上にて、鳴った。音から判断してメールだったので、確認は後回しでも差し支えなかろうと思えたが、それでも二つ折りを開いて内容に目を通す。
だから引っ込みがつかなくなったと言うわけでもないが。麻祈は、電話を掛けた。すぐに繋がる。メールを送信した直後だから手元に携帯電話があるのは然るべき事柄だろうに、なにやら電話向こうの気配は意表を突かれたように呆気に取られているような気がした。
なので、念を入れておくことにする。間違い電話をしてはいないか、まずはそこから。
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