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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. 紫乃の知覚が、見て、感じて、触れた麻祈は、どこまでも麻祈だった。丁寧で優秀で楚々として、いつだって温和な闊達さを絶やさない。ユーモアは、時にブラックが効かされていても香辛料程度で、毒はない。感情の起伏から伝わってくるのは、温もりのある溌剌さばかり。誰への害意も宿らない。そうして、等しく、麻祈で在り続ける。それは―――

 “彼”が、“麻祈”として全民に阿(おもね)っている姿だった。

(どうして?)

 ひたすらに周囲の空気を読む特訓を積んだ紫乃だから、“彼”に気付いた。

 麻祈は、紫乃以上に鋭敏に、見られている自分を演じている。紫乃以上に有能な彼だから、完璧に近い形で、求められる“麻祈”をやり遂げている。それは群衆に溶け込むことで群衆を防御壁とする紫乃以上にまわりを警戒し、群衆の中にいるからこそ鎧兜を脱がずにいる無頼の姿だった。

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. 平民でいるためには、平民の足を引っ張ってはいけないが、それ以上に平民から成り上ろうとしてはならない。下人は見殺しにしなければならないし、貴族には憧れるだけでいなくてはならない。夢を見て行動に出たら最後、図に乗るなと袋叩きにされてしまう。貴族ですら例外はなく、下民にまで落ちぶれたりするのだ―――事実として高校時代、脅威の頭脳を持つ変人特待生というほどほどの貴族だった葦呼が一斉にいじめの標的とされた事件は、矢十総司(やとそうし)というスポーツ能力&人柄・人望&美形が揃い踏みした最上級貴族とのアバンチュールを疑われたのが契機だったと伝え聞いている。まあ、矢十はのっけから誤解だと言うだけで野次馬騒ぎそのものには不干渉を貫いたし、なにより葦呼自身が私物どころか生身にさえ傷を作らされたというのに泣き笑いどころか頓着すらしなかったせいで、薄気味悪いと手を引く連中が続出したので、いじめその物はまたたく間に鎮火したのだけれど。

 ともかくその時。

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. それは、物心ついた頃から。

 どこまでも冴えない自分は気も押しも弱く、器量も才能も十人並みであるがゆえに十人並みの善良さと親切しか取り得が無いことを、紫乃自身どころか誰もが知っていた。なめられていた。幾度となく笑われた。一度たりと、笑わせることは出来なかった―――彼・彼女らの、誰のひとりも。

 世を儚んで屋上から飛び降りるような希少な純潔種でさえなかったから、同じような雑種の集団に紛れて、恥を忍びながらたらたらと一日一日を生きた。そうしないと、その一日一日が針の蓆(むしろ)に這うような地獄と化すことを、紫乃は思い知っていた。クラス内で持ち回りでやってくる、精神衛生的なごみ箱役―――いじめや嫌がらせは、いつの時代もつきものだ。紫乃の学校も例外ではなかった。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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