「あなたは疲れてるんじゃなく、傷ついている。俺にはそう感じます。であれば、それは愚痴ではありません。だったら、俺に聞かせてくださいませんか?」
手から、意識して力を抜いたのに、震えは一向に治まらない。
「坂田さん? 坂田さん。どうしました? どうか、したんですか? 坂田さん」
脱力した手の戦慄(わなな)きが増していく。
どころか、唇も震えてきた。前歯で噛む。喉まで震えた。飲み込む。生唾の一滴も嚥下していないのに、こみあげてくるものを感じていた。胃袋よりも下にひそんだ、底知れぬ胸の奥から……さらには、眼窩から。
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