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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「謙遜なさっておいでなのは、坂田さんの方でしょう。働いた度合いからしてみると、俺からお礼の品でも贈るべきかもって思うくらい、面映ゆいことをなさったんですから」

 純粋な賛嘆。

 彼が、そんなことを紫乃にしてはならない。

 紫乃は呟いていた。

「そんなことないんです」

「坂田さん?」

「わたしなんか、……―――わたしなんか、ほんとに迷惑なだけなんです。こんな程度で、みじめで、なにも出来なくて、どうしようもなくて……」

 声音に涙が混ざり出す。

.
人の全てを台無しにしてしまう自分は、上野の努力も麻祈の力添えも懇切丁寧にぶち壊して、こうしてまた彼の時間を無駄にさせてしまっている。それが分かって、消えてしまいたいくらい申し訳なくなった。それでも消えてしまえないなら、せめて泣き声を呑んでから、謝罪するしかなかった。

「ごめんなさい。迷惑ですよね。疲れてるのに、こんな話。やですね。気にしないでください。変なの。こんな、しみったれちゃうなんて、あたしも疲れてるみたい―――」

「嘘ですね」

 真摯な囁きに、紫乃のせりふが途絶する。

 それはまるで、あの日のひと言のようだった。ため息。あの時、彼はそう言ったのだけれど。

 これから先は、このままでは、ため息では済まされない。それを予感する。

 電話を切らなければ。この通話を、すぐにでも切らなければ。それを思う。こんなにも、そう思うのに。

 予感だけでなく、ついに身体にも予兆が訪れる。携帯電話を握りしめる手が震え始めていた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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