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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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(いくら好きでも厭きないか?)

 右隣の陣内と、彼の向こうに続くふたりの男を見やる。が、どいつもこいつも、悪くない、といった顔つきだった。期待が濃くなり真剣味が増した横顔が、表面的な笑顔にアルコールを注したせいで、勝てる勝負に挑む博打屋を思わせる半笑いになっている。下品だろうか? 好戦的だとは思えた。

 麻祈はと言えば、良いも悪いもない。厭きる・厭きないといったレベルにすら達していない。好きも嫌いも介在しない。なあ、加入儀礼(イニシエーション)をどう思う? ヘボが。思うもなにも、割り当てならこなすもんだろう―――

 自己紹介。相槌。相槌のような感想、あるいは感想のような相槌。求められた時に求められた最低限だけ輪に加わりながら、麻祈は淡々とビールグラスを干した。

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. 某日職場。よーアサキングぅ元気ぃヒマしてるぅって前置きすんのもアホくさいからついでに建前も抜いちゃうけど医者がいると女性陣がランクアップするから今度の合コンに例の彼レンタルさせてくんないって拝み倒されてしまいましたので生贄をお願い出来ませんでしょうかキング。と、ひと息に読経した上、椅子に腰かけたまま目からウロコを落とすだけの麻祈の肩まで揉もうと背後に回りすらした佐藤の境遇に同情せざるを得ず、懇願を承諾した。これで四回目だ。陣内と顔を合わせるのも同回数である。陣内の連れてくる男の顔触れは毎回違うが、麻祈とは毛色が違うという本質は同じだ。社交辞令以外のやり取りなど成立しない。させようとも思えない。一度試しただけで懲りた。増税には目くじらを立てるくせして、日本国の税制制度の不備について議論するのは嫌だと―――何故かひどく婉曲に―――言う。意味不明だ。数学的でない帰納法にしても穴がありすぎる。

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「で、俺はさ。じーっとひとつのトコに収まってるのはダメなんだよね。器じゃないっしょ? だから二年ごとに職を変えて修行して……」

 その口上が前回となんら変わり映えないことに気づいて、聴覚からも陣内を除外する。彼は―――麻祈と違って――― 一滴も飲んできていないだろうが、そのモダンカフェにいるどの客よりも酔っているように見えた。乾杯のビールを注文して数分。彼は間断なく陽気に笑いながら身振り手振りで会話を膨らませ、合コン相手の素肌のみならず女性従業員の脚線美までアトランダムに眼差しでつまみ食いして……つまりは、欲望に素直だった。下品だと断じるほど露骨でも無いが。

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. どうして自分が医者になったのか。その動機が見当たらないと言えば、人は驚くのだろうが。

 己のパラメータを分析した結果、医大の単位を修め、いずれ医師免許に手を届かせるだけのステイタスがそこそこ整っていると判断した際、それを選択しない理由が思い浮かばなかった。それだけだ。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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