.―――そこでまず頭をよぎったのは、こいつ性別あったのかという、友人への身も蓋もない再評価であり。
つーか抜本的にメスっぽくないからこそオスに性的嫌がらせすんのも楽勝なんだろうよコンチクショウという、友人らしからぬ再々評価による脳裏的卓袱台(ちゃぶだい)返しであり。
ついで追い打ちを掛けてきたのは、これをまんざらでもない据え膳だと舌舐めずりするには好条件じゃなさすぎる今現在への恨み言―――俺のこと振っときながらこのクソアマこの以下略のような過去歴も混じった気はしたが―――であり。
あと、強姦罪と準強姦罪に纏わる幾つかのニュースも、トピック以上に思い出しかけはしたが。
なにより最後に、今までの全部を押し流して溢れ返った怒涛が、これだ
「無理むりムリむり(No can do,no can do,no can do!)、ム・リ(Hell no!!)!」
絶叫を擦り切らしながら、ノリノリで痴女と化している佐藤の手を引き剥がす。それ自体は容易いことだったのだが、麻祈は同時に、安易過ぎた対応を取ってしまったことを悟った。佐藤が、むっとした顔つきも露わに椅子から立とうとする。それを反射的に、力任せに押さえつける。
佐藤は、それでも席を立った。力尽くで押し返すでなく、両肩を掴んでいる麻祈を支点に、ぐるりとテーブルを回り込んで、通路に出たかと思うと―――今度こそ正面から、レスリングを挑むかのような万力で掴みかかってくる。レスリングには無用のごった煮スラングで、発破をかけながら。
「てめぇの好き勝手にゃされねー(I'm not your doormat!)! オラぁウスノロじゃねー(I ain't stupid, you know!)!」
「静まれ(Shush you!)! 落ち着きなって(Take a chill pill!)!」
小粒な女―――である以上に、へべれけ―――の運動力など高が知れているので、押しとどめることそのものは大したことではないのだが、押しとどめ続けるとなると容易ではない。と言うよりも、こんな社交ダンスでも開始しそうな取っ組み合いを店員に発見された場合、出入り禁止を食らってしまいかねない。それは困る。となると、この膠着状態を一刻も早く解くことが、最優先されるべき喫緊の課題……
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