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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. 平民でいるためには、平民の足を引っ張ってはいけないが、それ以上に平民から成り上ろうとしてはならない。下人は見殺しにしなければならないし、貴族には憧れるだけでいなくてはならない。夢を見て行動に出たら最後、図に乗るなと袋叩きにされてしまう。貴族ですら例外はなく、下民にまで落ちぶれたりするのだ―――事実として高校時代、脅威の頭脳を持つ変人特待生というほどほどの貴族だった葦呼が一斉にいじめの標的とされた事件は、矢十総司(やとそうし)というスポーツ能力&人柄・人望&美形が揃い踏みした最上級貴族とのアバンチュールを疑われたのが契機だったと伝え聞いている。まあ、矢十はのっけから誤解だと言うだけで野次馬騒ぎそのものには不干渉を貫いたし、なにより葦呼自身が私物どころか生身にさえ傷を作らされたというのに泣き笑いどころか頓着すらしなかったせいで、薄気味悪いと手を引く連中が続出したので、いじめその物はまたたく間に鎮火したのだけれど。

 ともかくその時。

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. それは、物心ついた頃から。

 どこまでも冴えない自分は気も押しも弱く、器量も才能も十人並みであるがゆえに十人並みの善良さと親切しか取り得が無いことを、紫乃自身どころか誰もが知っていた。なめられていた。幾度となく笑われた。一度たりと、笑わせることは出来なかった―――彼・彼女らの、誰のひとりも。

 世を儚んで屋上から飛び降りるような希少な純潔種でさえなかったから、同じような雑種の集団に紛れて、恥を忍びながらたらたらと一日一日を生きた。そうしないと、その一日一日が針の蓆(むしろ)に這うような地獄と化すことを、紫乃は思い知っていた。クラス内で持ち回りでやってくる、精神衛生的なごみ箱役―――いじめや嫌がらせは、いつの時代もつきものだ。紫乃の学校も例外ではなかった。

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サルモネラ菌は、おおまかに言うと、主に動物の消化管に住み着いては病原性を示す細菌だよー。



 消化管に住み着いている菌だから、消化管から排泄された糞便(や、糞便に汚染された土くれ・飲食物など)を経口摂取することで、発症するのが大半なんだ。

 菌を小分けしていくと、食中毒として胃腸炎を起こすやつ、パラチフス・腸チフスという重篤な疾患を引き起こすやつとかって分けられたりもするんだけど、あたしたちが日常的に耳にするのは前者が大半かな。

 たまごかけごはんに限った食中毒ってなると、


1「サルモネラ菌に侵された卵の殻をつたいおちた鶏卵を生食することで発症した食中毒」
2「サルモネラ菌に侵された親鳥の体内にあったことから内部まで感染してしまった鶏卵を生食することで発症した食中毒」
3「サルモネラ菌に冒された手指をつたいおちた鶏卵を生食することで発生した食中毒」


 ……って、パターンかな。

 1と3は、卵の殻の洗浄や食前の手洗いを徹底すれば予防できるけど、2は卵その物が感染しちゃってるわけだから、生で食べると確実に食中毒になってしまう。上から吐いて、下からくだって、熱が出たりなんだりして、最悪の場合は敗血症を起こして亡くなることもあるよ。

 ま。加熱したら死んじゃう菌だから、きちんと火を通して食べる分には問題ないんだけど、それじゃたまごかけごはんの本義が揺らぐよね。あたしはナマの卵の白身キライだから、たまごかけごはん食べないし、別にいーけど(ほんと鼻水だと思わない? 生卵の白身)。

 確かに日本は、たまごかけごはんという生卵を食べる文化があることから、きちんと卵の表面を洗浄してから販売してるよ。でも、これで予防できるのは、上に上げた1のみだし……

 ……あのねー。分かっちゃいないかもって危ぶんでるから勝手に重ね重ね説明しちゃうけど、サルモネラ菌って、死者も出るよーな菌なんだからね。日本食は確かに美味しいよ。美味しいけど、それを安全に日本人が食べることが出来ているのは、日本国だからだよ。ホントは、刺身なんて滅茶苦茶クレイジーな食文化なんだから。アニサキスのせいで年間どんだけの人数が胃壁食い破られて血みどろ悶絶してることか―――

 ―――てのは、言い出したらキリがないから、閑話休題。あたしだって好きだもん。イカ刺し。

 ……とりあえず、日本以外で生卵を食べるのはやめにしといて、食事前にはキチンとお手てを洗おうねってことで。はい、今日はおシマイ!

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「―――もしもし」

「あ。麻祈さん! すいません、さっきの電話、大丈夫でしたか?」

「ええ。問題ありません。こちらこそ、こんな時間に掛け直してもよろしかったでしょうか?」

「それはもう、全然いいんで。別に。……それで、その」

「はい」

「こんなことは本職の人に訊くのが一番かなって思って、電話しちゃったんですけど。その……すっごく、下らないことなんですけど」

「とんでもない。あなたさえ俺でよければ、いくらでもどうぞ。それで、どのようなことでしょうか?」

.

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「アサキングぅ。改めて思うんだけど、毛ってすごくね?」

「……なにをどう思い改まったらそうなるのか、そっちの経緯の方もなかなかに興味深いが。え? なんだって?」

「だから毛だよ。ケ。モウとも読む」

「モウ読みだったら、数の単位だけどな。命数法」

「さすがアサキング。目の付け所が数学オタク。
 命数法は、アレだね。とりあえず全部唱えたら魔を払えそうだよね」

「そうだな。その気になるって大事だよな。きっと魔だって空気読んで、そっと退いてくれると思う。イタイ子をイジメたいなら姿を現さないままバコッと一撃を食らわせればいいのに、わっざわざ視認可能な場所に姿を現してくれる奴だし」

「きっと、分かりやすい日本語で話してくれるよね。咄嗟に『お、お前は何者なんだ!?』て叫んだら、『サア参りましょう閣下。奥方と首輪がお待ちです』って応答してくれるよね」

「俺は何者だオイ。魔に迎えられた俺は」

「いやー。毛ってすごいよねー。
 頭髪と睫毛と眉毛とムダ毛は、美容業界にどれだけ寄与してるのかなー。あっちで切ってはこっちで伸ばして、そっちを抜いてはこっちに生やすでしょ。黄金ループだよ。組み込まれたら金を払い続けるしかない商売サイクルだよ。
 腕とかスネとかはフサフサだと男性ホルモン強めっぽいのに、頭はハゲてる方が男性ホルモン強いとか言うし。頭皮と頭皮以外で格差社会だよ。生まれた場所で命運決まるよ。人間社会以上だよ」

「人間社会以外の観点から見ろよ。幸運の女神なんて、前髪しか生えてねーんだから。掴み損ねたら再チャンスはないって意味合いで」

前髪だけ生えた神(メス)を捕獲せよって、テレビ番組のハンター企画でも、わりかし罰ゲームの部類なんじゃないかな」

「ピクミンの一種だと思え」

「女神たくさん過ぎるよー。希少価値ないよー」

「仮にも神様を引っこ抜いてブン投げて敵に食わせることについて、感想はないのか?」

「ないよー。芽の代わりに、あんなに長い髪の毛して野生してたら、確実に女神は貞子と化してるし。うぞうぞ貞子。ミニサイズだから携帯電話の画面から出る。ガラパゴスの二つ折りを開くと、ホラあなたにも―――」

「お前だってガラパゴスじゃねーか。ケータイ」

「そうだった。やべ。帰れ貞子。帰らないとドラゴンの鉄拳が火を噴くぞ」

「ドラゴンって何だよ」

「あんたの忌み名」

忌まれてたのか俺!?

「たりめーだよ。じゃんけんすると三分の一の確率で相手を丸コゲにする奴なんて、がきんちょ時分から村八分に決まってるでしょ。いくら豊穣たる中国四千年とはいえ、異端者に明け渡す懐なんてないよ」

「なんたることか……ドラゴンとして生まれついたがゆえの過酷な運命(さだめ)……」

「うあ。真顔でドラゴンとか自称して恥ずかしくない?」

曇りなき眼(まなこ)でコノヤロウ!! このやろう裏切り者!! すいません裏切り者です、先生、せんせえええぇぇぇ!」

「そういや中国には、竜のヒゲって飴あったっけ」

「ああ。現地じゃおなじみだよな、龍鬚糖(ロンシュータン)。大昔、百人の大臣を招いて宴会をした際、飴を作ってる様子を見かけた皇帝が、『竜のヒゲっぽい! 縁起がいいぜ!』とはしゃいで顔面に貼り付けたことが起源だっていわれてる―――」

食い物を粗末にして遊び呆ける皇帝を諌められなかった百人の大臣は、古今東西 立つ瀬ないよね

「そっち!?」

「皇帝も皇帝なら部下も部下だよ。わたあめ貼り付けて『サンタクロース』なんてネタ、今時分じゃ小学生だってやんないし」

「酒でも入ってたんだろ。佐藤と同じで」

「あたし?」

「ああ」

「あたし飲んでないやい。そりゃ、さっきのデザートは洋酒入ってて酒臭かったけど。こんだけ水たっぷり飲んだらリセットだい」

「いや。それ日本酒

「へ?」

「上善如水(じょうぜんみずのごとし)。そーいう酒」

「は? な?
 た、頼んでないよ? あたし。そんなの」

「うん。俺が頼んで、コップに入れ替えた。さっき。実験したくて。
 水みたいな酒っつっても、さすがに気付くだろーって思ってた。デザートで誤魔化されたとはいえ……本気で味オンチなんだな、佐藤」

「アサキングに比べたら誰だって味オン―――にゃぎゃー! 酒だって分かった途端に顔が熱いーっ! 脈が速いー! ぐるぐる……ふわふわり……」

「あー。ノンアルコールドリンクでも、パーティーだと酔っ払う奴っているからなー。水じゃないと分かったら酔い出すのも道理だなー」

「こんな……はずでは……脳の堕落をあえて助長させる飲料を、そうする必要もないTPOに、好きこのんで摂取するなんて……」

「けっ。聖書にまで書かれてる二日酔いの醜態から、てめぇだけが逃れようったって、そうは問屋が卸さねーんだよ。
 ほれほれ息が上がってっぞー? マラソン後かー? 風呂上りかー? やーいやーい。けらけらけらケラケラ」

「見るなー! 取り乱して真っ赤でふしだらな―――じゃなかった、ふつつかなワラシを見るな! ―――歯を見せて笑うなぁ! ってか、言い間違いを笑ったのか呂律が回ってないのを笑ったのかどっちだ! どっちでも叩くからどっちとも言え! 一回で済むところを二連撃……うああぁんトイレどこー!?」

「そちらですよレディ。なんならエスコートでも?」

「うっさいあほ! あほー!」

「バタバタ走ると余計にアルコール回るから気をつけろよー。
 ……いいなコレ。ぺらぺらと饒舌になるのか。あんまり喋りたくなくなった時とか、ちょくちょく仕込んだろっと」

―――これが、中日(なかび)の顛末でした。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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