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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「気持ちの良い挨拶をする。誰にでも笑顔で接する。人を思いやる。今まで通りのそれに、今回のことで、どうか怯えないでいてくれないか。それが君であり、正しいことはそれだと思うから。ただ―――」

 ふと、社長の顔の色が煤(すす)けた。苦味ばしったそれは、あっという間に微苦笑にすり替わってしまったので、本質がなんだったのか、もう分からない。その表情を知らなければ、続けられたせりふのことを、耄碌に差し掛かった老人の繰り言だと思うことも出来たのだろうが。

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「あの時、君は、意識不明の人がいたから救急車に助けを求めようとしたそうだね。それは正しい。間違っていたのは、君への、上野君の当てつけだ。それは病気のせいかもしれないが、当てつけられたことそのものは残るし、君がそうやって傷つけられたのには変わりない―――だからこそ、傷を負ったからと、臆病風に吹かれたままにならないで欲しい。坂田君は、坂田君らしくしていて欲しいんだ」

「わたし、らしく?」

「そうだ」

 答えあぐねている紫乃を、社長が鷹揚な首肯でもって保障してくる。

「わたしはね。採用面接した時から、坂田君らしさを、とても重宝しているんだよ」

「ええと……わたし、なにかしましたでしょうか?」

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「あれは、わたしだって悪いんです。もっと上手くやることだって、きっと出来た筈なんです。それなのに、―――とにかく、上野さんを免職したりなんてことだけは……!」

「なんか勘違いしとるようだが」

 と、社長はつぶらな目をぱちくりさせて、

「今言ったのは大家の苦情だ。わたしの意見ではないよ」

「え?」

「それで、上野君に連絡を取った。そして、営業課長を含めて面接した。そこで、会社を休んだのは体調不良ももちろんだが、君に申し訳ないことをして逃げたかったからだと言われてね。そこでやっと、事情が呑み込めたんだ」

 その時の光景を思い出したのだろう。渋面の社長が、心痛を紛らわすいつもの癖で、片耳をさすった。

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「開けましておめでとうござりましたキング。早朝から空は薄雲を帯び、夕刻の雅(みやび)を心に再燃させるような紫紺の色を呈しておりますが、それは我々の心模様を写してのことではないでしょうか。それについて、わたしは反論するための確たる証拠を有しません」

「……要するに、なんか気がかりなことがあるせいで、曇り空が一層にどんよりと重苦しいって言いたいんだな? 佐藤。
 ああ。それと、はいはい。あけましておめでとう。電話向こうからペコリ。今年もヨロシクお願いいたします」

「こちらこそよろしゅうネンゴロにドウゾ。ぺこり。
 ってのはいいとして、助言が欲しいんだけど。アサキング、時間いい?」

「んだよ、暗いな佐藤。明るくなるコツは、どんなベクトルでもいいから、とにかく発奮してみることだぞ。死体の腸で縄跳びしてた変態ヤバ医の話は知ってるか?」

それ聞いて発奮したら あたしが変態女医だろが。
 ―――初夢を見たんだけどさぁ。あたし、ベビー服を着た息子(新生児)を抱いてるわけよ」

「服着てんのにオスだって分かったのか」

「うん」

「エスパーか」

「エスパーだったかもね。
 でまあ、その息子、あたしにこれっぽっちも似てないわけさ。髪の毛も目の色も真っ黒だし、直毛っぽいし、二重まぶたの切れ込み具合も攻撃的な斜度してるし。
 しかも、泣き止んだ直後だったのか、見た目が赤いわ黒いわどことなく腫れてるわでうへぇマジ肝臓だぁと思っちゃって。
 あたし思わず『キモチわるっ』って呟いちゃったんだけど」

「思わずじゃねーと出てこないストライクなツイートだな」

「そしたら、赤ん坊が『きもちわる』ってオウム返しに言ってきた」

「新生児が!?」

「息子が産まれて初めて発した言葉が『きもちわる』、だと!?
 と、ショックを受けたあたしは、またしても思わず『うわ。トラウマる。まじトラウマるわー』と、トラウマを動詞変換までしてしまい……」

「……まさか息子から、『こっちこそトラウマるわ』って直球でツッコみ返されたのか?」

「いや。『ぼく、虎生丸(とらうまる)』って名前認識されて

「変化球!?」

「名前にしてまで生涯この記憶を抱えていく覚悟だってぇのマイ・サン!? 『虎生丸、とらうーまる』って息子はぶつぶつ言ってるし、これ以上なにか言おうものなら、またしても余計な事態を引き起こしそうで黙ってたら、」

「そのブツブツが偶然にも悪魔召喚の詠唱となり悪夢の権化たるサタンが降臨―――」

「いや。目が覚めた。だけ」

「あ。三段オチじゃないんだ。日本人って3大モノが好きだから、三つ目くるかと思った」

「あたし、息子をどうすべきだったのかなー? 砕氷船みたいでカッケェ名前だぜ虎生丸、この世界の荒波という荒波をアイスごとブレイクだぜアイスブレイカー虎生丸、とかフォロー言うべきだったのかなー? アサキングどう思う?」

「……俺だったら?」

「うん」

「そーだなぁ」

「うん」

『丸』は おまる(日本式小児用便座)の意だと教えてやって、虎生丸がどーいった顔をするか観察したい―――

「ってコラこのヤローウ」


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 月経前症候群(PMS)、月経前不機嫌性障害(PMDD)は、その名のとおり、月経前に起こる諸症状のことだよー。
 「身体がむくむ」「乳房が張る」「頭痛がする」なんて身体的な症状から、「えらく甘クドいお菓子ばかり食べたくなる」「とにかく虫の居所が悪くなる」「理由も無く鬱になる」といった精神的症状まで。その強弱や期間は、女性それぞれ千差万別。

 成熟した女性は、一定の期間で、子宮の内膜の成熟・卵巣からの排卵・月経をリピートしてるんだけど、このサイクルを促すホルモンがエストロゲンとプロゲステロンなんだ。月経前症候群(PMS)ならびに月経前不機嫌性障害(PMDD)は、排卵後、プロゲステロンの分泌に伴って起こって、月経開始と共に消退していく。

 一応日本国では、生理が重たい人には「生理休暇」が労働基準法に定められてはいるけど、これは生理が始まってから適用される法律だし、しかも自己申告制だからね。休んでる時は無給にしてる会社も多いから、積極的な活用は出来ないかな(まあ有給にしちゃうと、モラルハザードに繋がる恐れもある以上、ムツカシイよね。『どーせ男の部長にゃ踏み込めない領分だろう、月イチの有給だと思って使っちゃえーい』みたいな人が出かねないし)。

 この治療だって、症状にあわせて、人それぞれ。血液検査をしてみて、症状と照らし合わせて、薬の処方を行っていくってのが一般的かな。痛みには痛み止め、貧血には鉄剤、精神神経症状には安定剤っていうのもあるし、全体的な効果を考えて漢方薬を出したりすることもある。……まあ、医者と当事者の判断にかかってるとこは大きいよ。動悸・不眠・イライラ・肌荒れ・冷え性、この全部に貧血的対処だけをするドクターもいれば、とりあえずピル剤出して、こっちは安定剤・こっちは塗り薬・こっちは栄養療法―――って個別にやりたがるドクターもいるから。

 ここで分かってほしいのは、どれがナンバーワンの治療なのかってことじゃない。あなたにオンリーワンの治療はどれなのかってこと。

 誰かには効いたのに自分には効かない―――それは、あって当たり前の話。あなたは、その人じゃないんだから。

 だからこそ、あなたが自分に向き合わないとね。

 今月はどんな症状なのか、この間はどの症状にどう対処してみて何が効いたのか、だとしたら病院に行くべきか行かざるべきか……きちんと考えて、行動するってことだよ。

 一番よくないのは、「ああ、いつもどおり調子悪い」って放置しておくこと。悪くなるって分かりきってるなら、悪くならないようにしなくちゃね。

 ってなわけで。今回は、女の子はご用心、な話でしたー。 

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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