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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. 自宅に戻ってからも携帯電話の着信音を気にかけて過ごしたが、メールのものばかりで通話のそれはない。とすると、その後、おおよそ上手くいったと思っていいだろう。自宅にて、風呂桶に湯が満ちるまでの時間をベッドの上で待ちながら、麻祈はそう判断した。

(救急車を受け入れている病院で、この時期のあの時間帯なら、おしなべて熟達者―――エキスパートかプロフェッショナルかスペシャリストかまでは知るところでは無いにせよ―――が揃ってる。だったら、さほど危ぶまれる状況でもないさ。まあ坂田さん自身は一般人だから、すんなりと納得もいかないだろうけど……)

.

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. 受話器向こう。ぽかんと、坂田が呆気にとられるのが伝わってくる。

「……え?」

「ため息をつくといいですよ。まず手始めに。ほら。さん・はい」

 機械越しに、空気がこすれる音がした。素直である。幸先がいい。

 頃合を計る。

「吐いた? なら吸って」

 麻祈は続けた。

「はいゴックン」

 一拍置き―――

「呑んだ?」

「は、い」

「では確認に移ります」

「……は、はい」

 返事を聞く。

.

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. そして身体も、その場から脱兎する。野外駐車場まで駆け出して、自分の車を探した。程なく見つけたそれを開錠して、運転席に乗り込む。

 陽光に蒸れた温かな車内。慣れたメンソールのにおいを嗅ぎながら、座席に背筋を沈め、フロントガラス越しの空を見上げる。そこは、常にあるような薄らかな藍色よりも心馴染む黄色にひたひたと侵された、じんわりした夕焼けだ。車のフェイシアに、ようやっと安堵の息を吹きかけて―――そこにきて、左手で携帯電話を握り締めたままだったことに気付いた。あなただからこそ甘えたようなことを打ち明けるけれど、実は週明けに重症例の検討会があって、その予習仲間からそろそろ連絡が……と同業者なら臍で茶を沸かすような虚偽をくっちゃべる際に印籠として小杉にかざしてから、握ったままでいたらしい。

(助さん格さんも無しに水戸黄門をやらかすなんて。とんだ“ちょいとそこまで(ポップ・アウト)”だ)

.

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. 小杉が麻祈の前に取り出して検分を求めてくるものは、奇妙な洋服から奇天烈な雑貨にいたるまで節操なかったが、色合いやら嗜好やらから推測するに、どうにも男性教授への贈答品選びだとは思えない。少なくとも麻祈だったら、ショッキングピンクと紫のマダラをした短パンや大臼歯型小物入れ(歯の窪みと、虫歯菌を模した数々のでっぱりに指輪などをひっかけるらしい)を教え子からプレゼントされたところで、エキセントリックな嫌がらせとしか思えない。

(自分のものを買いたいのか? だったら、なんでまた俺をつき合わせるんだ?)

 非効率的にも程がある。

 自分が買いたい物を把握しているのは当人だけだし、だとしたら当人がそこへ向かって直行すれば済む話だ。車椅子でも押してくれというなら話は分かるが、小杉はやせ細っているとはいえ、五体満足である。知性も教養も万人平均で、その発揮を阻害する因子すらどこにも見当たらない。まったくもって要領を得ない話だ。としても、

(俺が気に留めていなかったから覚えていないだけで、彼女はちゃんと話していたのかもしれないしな……)

 となると、やはり麻祈の自業自得である。今更なにがしかを問うて、小杉を不愉快にさせるわけには行かない。

(どーせ今日の予定として残ってるのは風呂だけなんだ。付き合えばいい)

 と、こっそり肩を竦める。そして小一時間が過ぎた。小杉は服をひと揃い購入したらしい。

.

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 それでは、今回もありがたぁくお返事させていただきますですよー。

>【新城】さん
「DNDDさまお久しぶりです!いつも楽しみに日参させて頂いています。話がいつも予想外の方向に(もちろんいい意味で)展開するので、おお!おおお・と思わず声をあげつつ楽しんでいます。ちなみにはゆぅさん(笑)には本気で爆笑してしまい、電車の中で隣に座っていたおっさんに怪訝な顔をされてしまいました。引き続き楽しみにしています!ちなみにインターホンの方でされ恋も進んでいるとのことで、そちらもすごく楽しみにしています!!!」


 毎度毎度、ありがとうございます。こちらこそお久しぶりでして、滅相もない。DNDDです。

 どうやら今のところはDNDDの思惑が新城さんのナナメ上らへんを行っているようで(笑)、ごく普通の紳士淑女を衆目の面前で挙動不審に至らしめるという非道な仕打ちが、ほぼ毎日に渡って繰り返し試みられている模様。なんたる悪行か!

 そーいや大昔、西洋童話のパロディを前世「され恋」でやらかした際も、「こんなもんノートに書きやがって! ノートだからお手軽に電車席で開いたら、即座にノート閉じて三分間が悪夢だったじゃねーか! 一行目から爆笑こらえて喉チンコ腫れるかと思ったぞなんでよりによってシゾーが姫役(以下検閲)」と非難ゴーゴーでしたねナマ読者から(実話)。

 ……シゾーの配役は事故ですよ。だって純然たるアミダクジでヒロインを引き当てやがったんですからさあ。このヤロウ。

 あ。この逸話のシゾーは、今のシゾーの前世にあたる「ARABIAN-KNIGHT」のキャラクターですから、まあ名前も異なる赤の他人です。新城さんはショックを受けてくださいませんよう願っています。マジで。

 と―――閑話休題。

 電車の中で……ということは、携帯電話のよーな小型ツールで当小説を閲覧しておいでなのですか? この辺が読みづらい等はありませんでしょうか? また気軽に、声を届けてください。

 そして、「されど誰が為の恋は続く」、通称され恋についてですが(笑)……いやはや、こんなにも熱心なファンは、本当に新城さんを置いて他におりません。ありがとうございます。自分ひとりのものでしかなかった連中のドタバタ劇が、誰かの中にこれほどまで息づいているなんて、奇跡としか言いようがありませんね。本当に、ありがとう。

 シゾーが好き過ぎて生きるのが辛いとのことで、……つきましては、本編を更新するまでの頓服薬として、今はホームページから撤去してしまっているシゾーのイラストを数枚、処方(=掲載)させていただきます。新しいイラストはホームページの該当ジャンルに収納しますから、今はもう無くなってしまっていた旧イラストの方がレア度が高くて、コアなファンは喜ぶかなぁと思ったのですが……秋の夜長にでも、またご覧下さい(笑)。うう、大変なお古で恥ずかしいので、続きに隠します……なので今回はファンコメもお返事もあらわになってしまいましたが、ご了承ください(照)。

 イラストがでかすぎる場合は、そちらの画面縮尺で、お好きに調整なさってくださいねー。


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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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