「おいしー!!」
「って佐藤! Shush(しーっ)! ここ どこだか分かってんの!?」
「街中アパート3階にあるアサキングん家の居間! 時刻的には夜中近く! な今!」
「どこかどころか時間まで把握しておきながらその声量!」
「んめー!! 雑炊!! マジウマあー!! これ英語でなんてぇの!?」
「え? あーっと。『 yummy 』か『 delish 』か……『 tasty 』でもアリだな」
「ヤァミーデリィッシュータァスティー♪ ヤァミーやぁみー♪」
「そーいった時は『 Yummy, yummy to my tummy ♪』って言い回しをお勧めするぞ。『 to 』は『 in 』や『 for 』にも置換可」
「ウマしコメを食いたいーキツい塩味が邪魔しないウマしコメを寄越しぃー居酒屋チェーン店の雑炊なんかイヤじゃーいってゴネてみるもんだ! めっちゃんまー! アサキング料理人じゃんかー!」
「大袈裟な……これでも実力の八割だぞ。炊いた米に、高い値段の即席茶漬け・具・薬味・出汁をブレンドしただけ。ベロで覚えるまでもなく頭で配合比を丸暗記しさえすれば、お前だって作れる手抜き品だっての」
「まじでか。
ってことは、料理人ってか、グルメなのかぁ。舌が肥えてるんだね。あんた」
「ぐるめ?
ああ、『 A gourmet 』。日本じゃ、こーいうのがそんなもんなのか」
「およ? 肥えた舌の持ち主って意味で、ほかにも単語あんの? 英語」
「英語じゃなくてもあるけど。英語なら『 An epicurean 』とか『 A gastronomiean 』とかかな」
「? どう違うの? そのみっつ」
「ニュアンスが違う。日本語にも、美食家とか食道楽とか食通とか食いしん坊とか健啖家とか、色んな言葉があるだろ。あれと似たよーなもんだ。
俺的に説明すると、『 A gourmet 』は旨味に敏感な人、『 An epicurean 』は美食の心地よさを知っている人、『 A gastronomiean 』―――『 A gastronomer』『 A gastronomist 』は食の美を追求することを心地よいとする人、かな。ガストロノミーの学徒って捉えるなら。
俗っぽい言い方で『 foodie 』ってのもあるけど、こっちはもっと、なんちゅーか……メシウマ好き (* ゜∀゜)! みてぇな感じのノリだ。あくまで俺訳」
「ガストロノミー、の学徒? そんな学問あんの?」
「うーん。学問って肩肘張ってる連中がいて、そーいった徒党の一派がガストロノミーを名乗ってるっちゅーのはあるらしい。
けど俺がいたとこじゃ、普通に『手塩にかけて作った美味しい食事・美食』って意味で使ってたからなぁ。ガストロノミー。
だからあっちにゃ『 gastropub 』なんて食事処があったりする。食事をウリにした居酒屋。懐かしいなー。
そのうち、『 Gastro-Bistro 』なんてのが出来たりしてな」
「パブ?
パブって、居酒屋って意味なの?」
「そうだぞ。おおよそは。
『 bar 』とか『 saloon 』とかの親戚だよ。イトコなのかハトコなのかって分け出すと、呑み屋と呑み処くらいにややこしいから、親戚くらいで理解しといてくれ。
ちゅーか。え? なんだと思ってたの? お前。パブ」
「女の人がスリットとチチ間で持て成してくれる水商売のお店」「ジャパニーズ和服老人 is ニンジャマスター 並みの誤解だぞそれ!」「うーん。海外の和食料理屋が『武蔵』とか掲げるのと同じで、日本の洋モノ酒場がそれっぽく気取るために『 pub 』って掲げてるだけなんだろけど。
お父さんが『ちょっとバー行ってくる』は許せるにしても、
『ちょっとパブ行ってくる』って娘(思春期)の前で言ったらガチ嫌われるんじゃないかなぁ。未経験だから知んないけど」
「……なんで『 pub 』だけそんな いかがわしい扱い?」
「なんでだろ? パフパフに語感が似てるから?」
「ぱふぱふ?
ぱ・っフ・ぱ・っフ? 『 pah! pah!』? 余計に いかがわしくねーじゃん」
「余計に いかがわしくないの?」
「いかがわしくないだろう『ちぇ! ちぇっ!』ってぶーたれてるだけじゃん。和訳したら。『 pah! pah!』。
……まさか。いやぁな予感がするんだけど。また違うのか? お前にとって。パフパフ。今度は何だっての? パフパフ」
「男の人が女の人のでっかいチチ間に顔はさんでフニフニしてもらうエロご褒美」「
とんだ とばっちりじゃねーか『 pah 』も『 pub 』も! 語感がかすっただけで『ちぇ!』っと『居酒屋』をエロい区分にしないでくれよ!
形が似てるってだけで男性器扱いされる頭部を持ってしまった亀に次ぐ不遇だよ!」
「そんなこと言ったら、メロンだってふたつ並んだら、まるっこくておっきいってだけで巨乳の代名詞じゃん。日本語にもあるけど。スイカップ」
「……なんてーか、どこの国でも、発想の根っこは同じよーなもんなんだな」
「違いないねー」
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