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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. 淹れた茶を飲んだのを味噌汁への締めとして、流しに茶碗をまとめ、パジャマから普段着に着替えた。歯磨きし、洗面台で顔を洗う。

 そして、後片付けだ。家族分の朝食やら間食やらの遺物である食器類に、あわ立てたスポンジをこすり付ける。熱湯でゆすいで、皿立てに積み木した。

 濡れ布巾で食卓を拭き終わったら、次は炊事である。台所の端にある冷蔵庫の中身と、机上にある鍋―――の中のじゃがいも―――を踏まえて、メニューを考えた。

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. 近づいて、順繰りに小皿のアルミホイルをはぐれば―――だからサランラップは買い置きしておいてって言ってるのに!―――、がんもどきの煮物がひとつと、たまごと菜物の煮しめがひと口分。別の皿にはパスタサラダ。そして最後のやつには、こんもりと、昔のコントでしかお目にかかったことがないような盛り方をされた白米。

(てことは、お父さん、またわたしのお茶碗使って二杯目のお味噌汁飲んだな~。高血圧の薬飲んでるくせしてぇ)

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. ぱか。と目が覚めたのは、正午前だった。

 いつもは七時前後で勝手に覚醒するのに、こんなぶっちぎりの寝坊なんて久しぶりだ。ひと言で言うなら、わひゃーである。ふたフレーズにするなら、どうしちゃったの体内時計ったらご乱心? ってなもんであろう。もっと言い足すとしたら、―――ささやかな恨み節。その程度だ。

「……ほんっとに、もうビールなんて絶対に飲まないんだから」

 二日酔いはないが、それでも不機嫌に枕元の目覚まし時計を握り締めて、紫乃は呟いた。

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「おいしー!!」

「って佐藤! Shush(しーっ)!  ここ どこだか分かってんの!?」

「街中アパート3階にあるアサキングん家の居間! 時刻的には夜中近く! な今!」

「どこかどころか時間まで把握しておきながらその声量!」

「んめー!! 雑炊!! マジウマあー!! これ英語でなんてぇの!?」

「え? あーっと。『 yummy 』か『 delish 』か……『 tasty 』でもアリだな」

「ヤァミーデリィッシュータァスティー♪ ヤァミーやぁみー♪」

「そーいった時は『 Yummy, yummy to my tummy ♪』って言い回しをお勧めするぞ。『 to 』は『 in 』や『 for 』にも置換可」

「ウマしコメを食いたいーキツい塩味が邪魔しないウマしコメを寄越しぃー居酒屋チェーン店の雑炊なんかイヤじゃーいってゴネてみるもんだ! めっちゃんまー! アサキング料理人じゃんかー!」

「大袈裟な……これでも実力の八割だぞ。炊いた米に、高い値段の即席茶漬け・具・薬味・出汁をブレンドしただけ。ベロで覚えるまでもなく頭で配合比を丸暗記しさえすれば、お前だって作れる手抜き品だっての」

「まじでか。
 ってことは、料理人ってか、グルメなのかぁ。舌が肥えてるんだね。あんた」

「ぐるめ?
 ああ、『 A gourmet 』。日本じゃ、こーいうのがそんなもんなのか」

「およ? 肥えた舌の持ち主って意味で、ほかにも単語あんの? 英語」

「英語じゃなくてもあるけど。英語なら『 An epicurean 』とか『 A gastronomiean 』とかかな」

「? どう違うの? そのみっつ」

「ニュアンスが違う。日本語にも、美食家とか食道楽とか食通とか食いしん坊とか健啖家とか、色んな言葉があるだろ。あれと似たよーなもんだ。
 俺的に説明すると、『 A gourmet 』は旨味に敏感な人、『 An epicurean 』は美食の心地よさを知っている人、『 A gastronomiean 』―――『 A gastronomer』『 A gastronomist 』は食の美を追求することを心地よいとする人、かな。ガストロノミーの学徒って捉えるなら。
 俗っぽい言い方で『 foodie 』ってのもあるけど、こっちはもっと、なんちゅーか……メシウマ好き (* ゜∀゜)! みてぇな感じのノリだ。あくまで俺訳」

「ガストロノミー、の学徒? そんな学問あんの?」

「うーん。学問って肩肘張ってる連中がいて、そーいった徒党の一派がガストロノミーを名乗ってるっちゅーのはあるらしい。
 けど俺がいたとこじゃ、普通に『手塩にかけて作った美味しい食事・美食』って意味で使ってたからなぁ。ガストロノミー。
 だからあっちにゃ『 gastropub 』なんて食事処があったりする。食事をウリにした居酒屋。懐かしいなー。
 そのうち、『 Gastro-Bistro 』なんてのが出来たりしてな」

「パブ?
 パブって、居酒屋って意味なの?」

「そうだぞ。おおよそは。
 『 bar 』とか『 saloon 』とかの親戚だよ。イトコなのかハトコなのかって分け出すと、呑み屋と呑み処くらいにややこしいから、親戚くらいで理解しといてくれ。
 ちゅーか。え? なんだと思ってたの? お前。パブ」

「女の人がスリットとチチ間で持て成してくれる水商売のお店」

「ジャパニーズ和服老人 is ニンジャマスター 並みの誤解だぞそれ!」

「うーん。海外の和食料理屋が『武蔵』とか掲げるのと同じで、日本の洋モノ酒場がそれっぽく気取るために『 pub 』って掲げてるだけなんだろけど。
 お父さんが『ちょっとバー行ってくる』は許せるにしても、『ちょっとパブ行ってくる』って娘(思春期)の前で言ったらガチ嫌われるんじゃないかなぁ。未経験だから知んないけど」

「……なんで『 pub 』だけそんな いかがわしい扱い?」

「なんでだろ? パフパフに語感が似てるから?」

「ぱふぱふ?
 ぱ・っフ・ぱ・っフ? 『 pah! pah!』? 余計に いかがわしくねーじゃん」

「余計に いかがわしくないの?」

「いかがわしくないだろう『ちぇ! ちぇっ!』ってぶーたれてるだけじゃん。和訳したら。『 pah! pah!』。
 ……まさか。いやぁな予感がするんだけど。また違うのか? お前にとって。パフパフ。今度は何だっての? パフパフ」

「男の人が女の人のでっかいチチ間に顔はさんでフニフニしてもらうエロご褒美」

とんだ とばっちりじゃねーか『 pah 』も『 pub 』も!
 語感がかすっただけで『ちぇ!』っと『居酒屋』をエロい区分にしないでくれよ! 形が似てるってだけで男性器扱いされる頭部を持ってしまった亀に次ぐ不遇だよ!

「そんなこと言ったら、メロンだってふたつ並んだら、まるっこくておっきいってだけで巨乳の代名詞じゃん。日本語にもあるけど。スイカップ」

「……なんてーか、どこの国でも、発想の根っこは同じよーなもんなんだな」

「違いないねー」



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. 柄から紙雑巾を外して捨て、手をはたいてからメールを確認する。目を離した隙に八通到着していた。いちいち返信するのも無駄に思えたので溜めてから返そうと思っていたのだが、八通読んでもなにを返せばいいのか理解に苦しむ密度の内容が続いている。ありとあらゆるデコレートをされた“焦げ目カワユし”のひと言に、プリンと半溶けアイスの乗ったトーストの写真を添付されていたところで、朝っぱらから辛党を悪夢へ送り返す食卓ですねとしか言えない。としても、このメールにその返信は相応しく無いことも分かりきっている。

 結局、自分も朝食はパン食で済ませたとだけ返した。洗濯機の洗濯完了のアラームが聞こえる。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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