「なあ佐藤お前にとってのカミングアウトを教えてくれ頼むから」
「なんじゃいな急に電話してきて。ヤブから棒に犬を当てる気か。仮に犬だとしても当たってたまるかい棒になんて。宝くじなら許す。ってなわけで、こん棒から当たりくじに持ち替え次第 出直してくるがよろしかろう。ぷい」
「ことわざフュージョンして不貞腐れてないで教えてくれ!
こ・の・と・お・り・だ、心友(P-L-E-A-S-E, Mon ami!)!」
「にゃろー、キングなこって(Oh man! It's you to a T!)。
……カミングアウトお? ええと。
こないだ おにぎりの具にチョコレート使ってみたら割とアリでした」
「何割アリだってんだ!? 聞くだにマイナスなパーセンテージしかねーよそれ!」
「ちゃんとプラス割だって。
チョコパンがあるんだから、炭水化物とチョコレートって根本的に相性いいんだよ。
ってか、なに? それがカミングアウトじゃ不満なの? アサキング」
「ああ不満だチクショー。
職場じゃ同僚が『カミングアウトすると天パなんだよねー自分。早く梅雨あけねーかな』とか言ってるしよー。
なんなんだ。天パくらいで。俺のビビリを返せ」
「天パじゃカミングアウトになんないっての? ちゅーか。ビビったの? あんた」
「ビビるもんだろ
『俺ゲイなんだ』とか続くって思ってたら!」
「え? そなの?」
「そうだよ!
『coming‐out』ってのは、『In closet』の『come out of the closet』を略した名詞だぞ!
ちょっとしたぶっちゃけ話って意味じゃ使わねーよ! 当人にとっちゃ暴露本書ける並みの一大事を告白する時に使うんだよ! 知らねーのか!」
「知んないよ、そんなの。
え? なにがクロゼットから出てくるって? いんくろ?」
「『In closet』! 世を忍ぶ同性愛者のこと! 大概は男の!」
「へー。初耳。
ああ。クロゼットに篭ってた奴がクロゼットから出てくる……もう押し込められないでいい・人目を忍ばなくていい、そうしてた根幹を公言したから、ってことね。成る程」
「隠れゲイが何で俺なんかにカミングアウト向けてくるんだよ俺がターゲットだって暗に言いたいのかよヤベぇよどうしようってビビるだろ!!
いや性的なことで無いにしてもカミングアウトっつったら借金で火の車とか何かの依存症とかって深刻な話だろ! 俺そんなん打ち明けられる深い付き合い職場でしてるつもりねーしだったら深みまで引きずり込もう的な意図しかうかがえないだろ! カミングアウトするなんて! 俺なんかにカミングアウトするなんて!
だってのに、蓋を開ければ
天パかよ! ただ天パってだけかよ! So what!? てぇか知ってるよ! その不自然な直毛具合からして素は天パだって知ってるよ俺だけでなくどいつもこいつも! 打ち明けられずとも! とっくに!」
「ちょいとちょいと。安心あまって憤懣ひゃくばいになってるよ。
良かったじゃん。ホモ友になってくれって話でも連帯保証人の話でも無くて」
「そーなんだけどよー。ビビリ損したって言うかー」
「じゃーあたしをビビらせる話していいから。ほら。八つ当たりを受け入れてしんぜよう」
「お前をビビらせる話?」
「おうよ。どんとこーい」
「……実は友人が、」
「おう」
「
おにぎりの具にチョコレートをチョイスするゲテモノ食いだと先ほど判明し」
「てコラこんにゃろーう」
[0回]