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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「んじゃ、女の子そろったんで入りましょっか」

 それぞれに甲高い声を上げる彼女らの先頭へと、陣内が進んだ。そこまでついていく勇気がなくて、紫乃は途中で歩くのを遅らせた。自然と、陣内・モデル三人組・自分の順に入店することになる。まるで合コンのカーストにおけるポジションを暗示しているかのようで、嘆息に涙が混じりそうになった。涙そのものは、先を行く女性らの香水だかヘアスプレーだか服の柔軟剤だかごちゃまぜになって嗅ぎ分けられない残り香に鼻先を打たれたせいだとしても、心細いのそのものは真実だ。

(とりあえず、わたしなんか切り捨てちゃうような人が陣内さんじゃなくって助かったけど。浅木さんって人も、こうだといいなぁ。出来たら、葦呼の話とかで、ご一緒してくれないかなぁ……)

 えらく他力本願な話だが、自分は今のところ群れる仲間がいないのだから、それくらいの夢を見たって許されるだろう。折角、奇跡を願ったら叶えてくれる妖精が一匹くらい潜んでいそうな店内にいるのだし―――

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 仕事帰りらしくスーツを着崩した陣内に彼女らを合わせると、まるでクラブの一角から参上したかのような気風を感じた。実際そういった接客業のノリを思わせるユルい軽妙さで、陣内が問うてくる。

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 無目的に携帯電話を弄りつつも、目線は彼らの動向をロック・オンするしかなかった。その四人は、入店するでもないが、かといって立ち去る気配でもない。空席待ちの客だろうか―――そんなに流行っている店なのか、いっそ本当にウェブ検索してみようかと紫乃が逃げ道を手探りしているうちに、画面に表示されたデジタル時計が、約束の時間となってしまう。

(やめてよぅ! こんな時に!)

 もう店内では、合コンの参加者が揃い踏み? 正反対に、ひとっこひとりいない? それとも、まばらに集結し出したところ? 自分がどのシチュエーションを望んでいるのかさえ把握していなかったが、紫乃は携帯電話から顔を上げて、店舗を見ざるを得なかった。内側まで見透かせなのは、分かり切っていた、というのに。

 途端、ずっとドアのふちに陣取っていた例の男性と、目が合う。

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 唐突だった。目の前が、ひらける。

 驚いて、紫乃はそこへ歩み出た。大通りとは言わないが、二人三脚どころか花一匁くらいはこなせそうな中堅の路道が、右から左へと横たわっている。どころか両者左右、それはそれは、連綿と続く。きらめく店名看板が軒を連ねる背後に、瞬くことだけは前者に打ち勝つ要素がある なんちゃら看板(店名かどうかは、読めないから分かりようがない)。ぽつぽつと、行きがかりのグループや、それ贔屓の客引きの姿……往来する彼ら、彼ら以外の往来に、もう見分けることが出来ないまたしてもの往来。―――どうやら、下車したところから店まで最短距離を地図として表示していたせいで、妙な近道をぐねぐねしてきてしまったらしい。

(うわー。そしたら、逆に辿って帰り道に出来ないじゃん。大丈夫かなぁ)

 合コン終わり間際に姉に連絡する打ち合わせにはなっているが、彼女は自家用車で迎えに来るはずだから、来れたところで駅前のロータリーどまりだろう。どこかに駐車させてから、こんなところまで徒歩でやってきてくれるはずがない。ていうか、もう社会人ン年目の大の大人が、そんなことをしてもらったら恥ずかしい。

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 夜の駅前でバスから降車し、紫乃は周囲を見回した。

 それは、怪しい商売人などに囲まれる気配がしたからではない……単純に、指定された店までの地図と現実の風景との整合をはかっていた。首都やその近郊では前者を警戒する必要性が高いのかもしれないが、こんな地方都市では、方向音痴が我知らず見当違いの区画を彷徨った挙句に迷子となる危険性の方が高い。歓送迎が込み合う時期でもないので、道を尋ねようにも通行人さえいないかもしれないのだ。

(うー。携帯電話に地図あるけど。こんな奥まったとこ、ひとりで行けるかなぁ)

 手の中の小型の液晶画面には、外国語―――の店名だ、それは分かる、まぁそれを公用している国名は定かでないにしても、それでもだ―――と、現地点からそこに至る順路が示されている。ただしその道筋は、中世の怪盗が金庫の鍵穴に突っ込んでかちゃかちゃやるピンを思わせるカクカク具合ときていた。見るだに難問である。さらに夜間とあっては視界も利かないし、その上ひとりきりである。

(まあ、どれもしょうがないんだけどさ)

 紫乃は苦汁を飲んだ。携帯電話を頼りに、大通りから外れる細い裏道を、おっかなびっくり進んでいく。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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