無目的に携帯電話を弄りつつも、目線は彼らの動向をロック・オンするしかなかった。その四人は、入店するでもないが、かといって立ち去る気配でもない。空席待ちの客だろうか―――そんなに流行っている店なのか、いっそ本当にウェブ検索してみようかと紫乃が逃げ道を手探りしているうちに、画面に表示されたデジタル時計が、約束の時間となってしまう。
(やめてよぅ! こんな時に!)
もう店内では、合コンの参加者が揃い踏み? 正反対に、ひとっこひとりいない? それとも、まばらに集結し出したところ? 自分がどのシチュエーションを望んでいるのかさえ把握していなかったが、紫乃は携帯電話から顔を上げて、店舗を見ざるを得なかった。内側まで見透かせなのは、分かり切っていた、というのに。
途端、ずっとドアのふちに陣取っていた例の男性と、目が合う。
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それを逸らす間もなかった。彼が、こちらへと気さくに片手を挙げる。
「もしかして、陣内って名前に覚えアリな子?」
「は、はい」
「ども。その陣内でーす。これから二時間ヨロシクねん♪」
軽快と軽薄の間の口ぶりで、やはりそのような調子の片手敬礼をくれてくる陣内に、紫乃も小腰をこごめた。
それを元通りにする。即座に、品定めの視線を感じた―――彼以上に、彼のそばにいた三人の女性から。ファッション誌から抜け出てきたような空気と色彩と容姿を纏ったふたりと、どちらかというと週刊誌のスクープからすっぱ抜かれてきたような過激さの方が際立つひとりが、紫乃をどのような皮算用に掛けたものか……知りたくもなかったが、知らない筈もなかった。それは、みすぼらしい端役の参上を受諾した主賓の睥睨だった。慣れている。
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