仕事帰りらしくスーツを着崩した陣内に彼女らを合わせると、まるでクラブの一角から参上したかのような気風を感じた。実際そういった接客業のノリを思わせるユルい軽妙さで、陣内が問うてくる。
.
「んで、どっちの知り合い? 髙藤(たかとう)さん? それとも佐藤さん?」
「ええと。どっちもです。どちらも友達で。ただ、ここへのお誘いの電話をくれたのは、佐藤です。佐藤葦呼」
「あー。そんな感じする。うんうん。あとの三人は、みんな高ランのクチなんすけどねー」
と首を縦に振られ、余計な疎外感に、なおのこと憂鬱が募った。彼へ言ったとおり、紫乃は佐藤葦呼とも高藤華蘭とも友人だ。しかし極端な話、前者の売りは知性であり、後者の売りは女性である……つまり、第三者から俯瞰しても後者との類似性に乏しく、さらには頭のレベルでも前者にちっとも及ばない紫乃など、まるきり場違いなのだ。
「佐藤のイコっちには随分お世話様だから、またヨロシク言っといてくれるとサンキュでーす」
「はあ。はい」
物憂く返事をする紫乃など露知らず、くるりと背を向けた陣内が、そちらにいた女性三人へと声を上げた。
[0回]
PR