そのうち星座繋がりで神話の薀蓄から陣内の略歴へと話題が波及する頃、遅れていた男性ふたりが到着した。陣内は、乾杯の注文のために呼んだ店員が来るまでの秒数ですら、彼らの遅刻を出汁に場を盛り上げた。それは裏表なく盛況を買うがためのものであって、彼らを貶めるものではなかったから、男らも若干迷惑そうではあったものの、ちょっかいそのものを邪険にはしなかった。
そして、店員が現れる。
「みんな、まずはビールでいいっすよねー」
言ってくる陣内の視線に触れられた気配を感じて、紫乃は頷くしかなかった。ビールは苦手だ。そもそもアルコール全般からして得手ではないけれども、どうせ飲めないなら、最初から仲間はずれにはなりたくなかった。
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ビールが到着して乾杯を終える頃には、陣内の尽力もあって、合コン特有の初対面時に満ちる空気―――「まあ、手を付けるならこいつだな」―――は、かなり薄れていた。じゃあ改めまして、と気取ることも無しに、陣内から男性陣を紹介し始める。ひとり目途がつくと、次の男性、また次へと、苗字の順番が回って……―――回り終えて、
(いないじゃん。浅木さん)
彼ら全員を聞き終えて、紫乃は拍子抜けした。更には混乱した。希望の不在に、慌てふためいた。
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