「ありがと。参考にするね。お母さん」
言って、紫乃は席を立った。鞄を手に、外へ出る。
春に向けて着実に日暮れまでの猶予が拡大されてきているとはいえ、空はさすがに落暉の紅絹(もみ)色に差し掛かっていた。黄味がかった緋色の夕日が刻一刻と失われていく己の車の運転席にて車内ライトをつけ、手帳から目的のレシートを取り出す。
記されている店名を、携帯電話を使って検索すると、市内の酒屋であることが分かった。氷以外の商品名を調べてみると、みっつが焼酎で、ひとつがウイスキーで、最後のものがハイボールとかいう缶飲料らしい。これに占めている比率からすると、焼酎を贈答品にするのが無難そうだ。
紫乃は、車を出した。携帯電話に表示させた地図の通り、店までの道順を辿る。
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