. 日曜日。現実味が無いのに、現実は続く。
日が昇ると眼が覚めた。風邪を引いたように生活していたら、日が落ちたので、寝た。
月曜日。火曜日。水曜日。いつも通りに出社する。現実味が無いから、現実を続けることができた。働いて、働き終えて、帰宅した。
そして木曜日の夕方。昨日と同じように帰ると、昨日と違ってまだ姉も父もいなかった。暇を持て余していた母に言われるがまま、いつもの食卓の自分用の椅子に座らされて、体温計を脇に挟む。アラームがしたので取り出し、母に返した。
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「平熱よねぇ」
ほっぺたに手をあてて、母が眉をしょげさせた。
「食欲もなさそうだし」
「食べてるけど」
「食べてるだけでしょ。もう、この子は」
と、紫乃の小声に耳聡く言い返し、ため息をつく。
「どうしたの? 悩み事でもあるの?」
「なやみごと」
そんなものはない。三食摂れているし、働くことも出来ているし、こうして聞かれたことに答えている。今朝のニュースの占いで、自分が四位でラッキーアイテムがロリポップキャンディだったことも覚えていた。なんの問題も無い。だとしても、悩み事とやらを打ち明けなければ、母は娘を心配し続けるだろう。それは困る。だったら、悩み事を打ち明ける必要がある。
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