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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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 ちょうど酒も飲み干した。本を閉じ、身体を起こす。そのまま麻祈は、ベッドの上であぐらをかいた。サイドボードにある財布のわきにコーヒーカップと携帯電話を置くついで、自分の手首にある時の羅針盤を、再度見やる―――そろそろ身支度を整え始めてもいい頃合いだった。のだが、せめて口に含んだ氷のかけらがなくなるくらいまでは、それをしたくない気分だった。氷片を無くした口蓋に、なお一層の生ぬるさを感じることになると分かっていたとしても。

 案の定、氷はすぐに溶けて消えた。

「……めんどくさ……」

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「そんなもんお互い様だろ。バラエティの名物コーナーは、外しちゃならない予定調和だ。邪魔くせえな。言わせるなよ、こんな納得ずくのこと。もう切るぞ」

「待って待って。あとひとつ」

「あァ?」

「女衆のうち、三人はあたしの友達の友達だけど、ひとりはあたしの友達なんだ。サカタシノってんだけど」

「酒田市の?」

「発音違う。苗字のサカタは、勾配の坂に、田んぼ。名前のシノは、パープルの紫に……ええと。ノは。アレだ。あんた常連の店、乃介蔵(ののくら)の、最初の乃。その紫乃にも、かなり頼み込んで参加してもらったんだ。無理矢理言われてやって来たハグレモン同士、同病相哀れむと時間が潰れやすいと思う」

「ふぅん」

 そう応じて。

 麻祈がその時イメージしていたのは坂田紫乃という佐藤の女友達でなく、三股の尻尾を反り返らせて乳ドラムを繰り返す垢じみた巨躯ゴリラだった……古びたカサブタ色をした。

 言ってみる。

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「んで。どうかした? 合コン延期? 中止?」

「いんや」

「なんだよ悪い知らせか。なに?」

「だから。ごめん」

「―――っはは! 謝ることかよ」

 今一度の謝罪を、陽気な一笑に付す。陽気だったのは、あくまで彼女―――佐藤に向けての慰めだったからだ。ついでに腹の底の陰鬱も、意識の及ばぬ奈落へと笑い飛ばせたら良かったのだが。

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 電話口で、抑揚も色気もない女声が流れていく。

「ごめんアサキング。今なにしてた?」

「気合入れてムダ毛抜いて勝負パンツに履き替えてた」

「ほんとなら嬉しいけど、確実に嘘だから嬉しくない」

「当たり前だろ。なに言ってんだ?」

「ほんとのこと言ってる」

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「はい。こちらCIAの特殊捜査班。どこが特殊かって? 決まってるだろ。こうやって電話口で正体をバラしてることさ。バラしてどうする。捜査班として特殊すぎるわ」

「まったくだ」

 実を言えば、CIA云々にまつわる切り返しは冗長となることを期待していたのだが。

 それを裏切られた落胆よりも、そう切り返すだけの余裕を会話相手から失わせた激務具合にこそ、彼―――麻祈は、ため息をついた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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