忍者ブログ

きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「それで。なんでしょう?」

「登録社員から引き抜いてきた上野さん。上野、飛小夜(ひさよ)さん。仮雇用中の。記憶にあるかな?」

「もちろんです。彼女に女性独身寮の案内をしたのは、わたしですから。その時は大家さんが不在で、鍵を借りて。その上野さんが、どうかなさいました?」

「君は社内組だし事務だから知らなかったろうが、今週半ばくらいから、ひどく調子を崩している様子だったんだよ。上野さん。いや、わたしも営業課長から報告を受けて知ったんだけど」

 そこで、喋る言葉を考えるいつもの手癖で片耳を掻いたのだろう。社長のせりふが止まる。彼だって休日で自宅にいるはずなのだが、物音からは、まんまるの目に管理職の悲哀を漂わせながら示指で耳朶をさするデスク姿しか思い浮かばなかった。

 その温厚な丸顔に似合わない、困惑を宿した静けさの漂う声が語っていく。

.

拍手[0回]

PR

. 食事は支度してしまったし、これからパジャマを洗濯しても夜までに乾かない。テレビを観賞する気分でもない。漫画を読むという案もあるが、自室の本棚にあるのは読み古したものばかりで冒頭さえ読めばオチまで目に浮かぶくらいだし、新しく購入しようにも、これから化粧してまで買いに行きたいほど夢中の作家はもういない。ランドセルをがちゃつかせていた頃は、仲良しグループ内で一ページずつ漫画を描きっこして交換日記代わりにしていたくらい大好きだったのだけれど。

.

拍手[0回]


. 淹れた茶を飲んだのを味噌汁への締めとして、流しに茶碗をまとめ、パジャマから普段着に着替えた。歯磨きし、洗面台で顔を洗う。

 そして、後片付けだ。家族分の朝食やら間食やらの遺物である食器類に、あわ立てたスポンジをこすり付ける。熱湯でゆすいで、皿立てに積み木した。

 濡れ布巾で食卓を拭き終わったら、次は炊事である。台所の端にある冷蔵庫の中身と、机上にある鍋―――の中のじゃがいも―――を踏まえて、メニューを考えた。

.

拍手[0回]


. 近づいて、順繰りに小皿のアルミホイルをはぐれば―――だからサランラップは買い置きしておいてって言ってるのに!―――、がんもどきの煮物がひとつと、たまごと菜物の煮しめがひと口分。別の皿にはパスタサラダ。そして最後のやつには、こんもりと、昔のコントでしかお目にかかったことがないような盛り方をされた白米。

(てことは、お父さん、またわたしのお茶碗使って二杯目のお味噌汁飲んだな~。高血圧の薬飲んでるくせしてぇ)

.

拍手[0回]


. ぱか。と目が覚めたのは、正午前だった。

 いつもは七時前後で勝手に覚醒するのに、こんなぶっちぎりの寝坊なんて久しぶりだ。ひと言で言うなら、わひゃーである。ふたフレーズにするなら、どうしちゃったの体内時計ったらご乱心? ってなもんであろう。もっと言い足すとしたら、―――ささやかな恨み節。その程度だ。

「……ほんっとに、もうビールなんて絶対に飲まないんだから」

 二日酔いはないが、それでも不機嫌に枕元の目覚まし時計を握り締めて、紫乃は呟いた。

.

拍手[0回]

カテゴリー

プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

忍者カウンター