唐突だった。目の前が、ひらける。
驚いて、紫乃はそこへ歩み出た。大通りとは言わないが、二人三脚どころか花一匁くらいはこなせそうな中堅の路道が、右から左へと横たわっている。どころか両者左右、それはそれは、連綿と続く。きらめく店名看板が軒を連ねる背後に、瞬くことだけは前者に打ち勝つ要素がある なんちゃら看板(店名かどうかは、読めないから分かりようがない)。ぽつぽつと、行きがかりのグループや、それ贔屓の客引きの姿……往来する彼ら、彼ら以外の往来に、もう見分けることが出来ないまたしてもの往来。―――どうやら、下車したところから店まで最短距離を地図として表示していたせいで、妙な近道をぐねぐねしてきてしまったらしい。
(うわー。そしたら、逆に辿って帰り道に出来ないじゃん。大丈夫かなぁ)
合コン終わり間際に姉に連絡する打ち合わせにはなっているが、彼女は自家用車で迎えに来るはずだから、来れたところで駅前のロータリーどまりだろう。どこかに駐車させてから、こんなところまで徒歩でやってきてくれるはずがない。ていうか、もう社会人ン年目の大の大人が、そんなことをしてもらったら恥ずかしい。
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