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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「あのさ。もう甘えついでに訊いちゃうけど。麻祈さんって、その……嫌いなのかな。そういうの」

「どういうの?」

「その……オンナ濃度っていうか」

「パンチラ?」

「じゃなくて!」

「だよね。嫌いな奴いないよね。知らんけど」

「それでもなくて! ……オンナ攻め。料理してもらうのとか」

「うーーーーーーーん」

 盛大にうめいてから、葦呼が呟いた。

「自分の好き嫌いより、それこそ面倒臭いかどうかってのが重要なんじゃないかなあ。あいつキングだから」

「どういうこと?」

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「にしても、あん時あれでよかったのかなー? 横恋慕されたことも人妻になったこともないから、上手くやれたか分かんないや。ちゃんとエロマダムっぽかった? あたし」

 返答に困り、とりあえず呻く。

「ええと。エロマダムを見たことが無いから、わたしも良し悪し分からない」

「だよね。まあ正確じゃなくたっていっか。ちょっとだけそれっぽいパーツがチラ見さえ出来れば、あとはあっちでお好み補整して、お好みであるがゆえに、最高ランクまで価値上げてくれるから」

「そうなの?」

「らしいよ。その証拠に、パンツはいただけの女の子よりも、パンチラする女の子の方が価値高いんだって。男にとっては」

「誰から聞いたのそんな話」

「華蘭」

「あっそう……」

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「ホーカス・ポーカス。マジシャンがマジックする時の合言葉だよ。ちちんぷいぷい」

「なんでマジシャン?」

「おおかた、あたしと寸前までマジシャンと帽子の話してたから、つい出たんでしょ―――ちちんぷいぷい(ホーカス・ポーカス)、ただ今この場に『有名医大の主席で帰国子女・名家生まれの将来有望イケメンドクター』から『人妻に粘着する変態男』を取り出して見せましょう、って腹を括った時に。だからこそ、シルクハットから出てくるのはウサギってくらい陳腐に、エロい仲だから人前でチューって、単純な構図を見せつけたんだよ。悩む隙のない、明快な図案。悩まないなら、勝手に妄想し出すのも止められないさ。口づけたのはエロい仲だからで、こんな派手カラフルなあたしを差し置いてまで、こんなのとそんな仲だなんて、普通じゃない……普通じゃないとしたら……となったところで、下衆の勘繰りを促すトドメに、」

「横恋慕とか泥棒猫とか、あのせりふ」

「そう。それが分かってしまったら、だったらあたしは応えなきゃ」

「え?」

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「どう、って……」

「あの派手カラフルな美女は、まず間違いなく嘘だって決め付けるか、じゃあ女としてのあたしを見てよって攻勢を厳しくしたんじゃないかな。こう言っちゃアレだけど、あの人は紫乃を格下に見積もっていたみたいから、“どっちも”なんて並列に扱われた時点からカチンときてる。絶対に認めない。だったら引き下がらない。引き下がったとしても、それはあとからアサキングに変化球ブチ込むためのフェイントだ。あの子が傷つかないようにみんなの前では振ったふりしたんだろうけど、あなたはそんな意味でさえ優しい人だって、あたしだけは分かってるから、……とかなんとかって後手が来る」

 思い返してみると、ありえる話だとは思えた。ただ、断言する葦呼に納得を強いられている気がして、それに反発するように紫乃は食い下がった。

「自分にとっては、どちらも友達です。は?」

「論外論外。とんでもない。女友達からオンナ枠に昇格させようって、さっきのより三万倍ねちっこく増長したオンナ攻めが待ってる」

「オンナ攻め?」

「うん。あたしも聞きかじりだけど。我が物顔で目覚まし時計より早くモーニングコールかけてきたり、わけ知り顔で約束も口約束もしてないのに部屋まで押しかけて来たり、その挙句にこれ好きだったよねって疑いもしないで勝手に冷蔵庫のものあさって料理したり、」

「りょ」

「どしたの?」

「いやいやいや、なんでもないっ!」

(しなくてよかった! しなくてよかったあ!)

 心中穏やかでない紫乃を知らずに、葦呼は説明を続けている。

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「ええ!? なにそれ!? なんで葦呼ってば、そんな映画に出てくるみたいな特別な絆っぽいこと言うのっ!?」

「特別な絆じゃなくて。どこまでも同類なだけ」

「なにそれっ!?」

「あー。うえぇえ。うーん。もー」

 うなりにうなって、葦呼がどうにかこうにか手探りの解説をし始めた。

「そもそも論から行くけど。あのね紫乃。人って大概、もっともらしい真実より、ひょっとしたらあるかもしれない真実の方が好きなのさ。あ・い・上・お、は『上』が『う』『え』で間違ってるって理解できるのに、粘土・六・塩・靴下・赤って言われたら、そういうこともあるかもって信じちゃうんだよ」

「ええ? まさか。ないない。そんな」

「でも紫乃だって、実際、今日の星座的ラッキーアイテムは赤い靴下ですって朝ニュースの占いで言われたら、そうかもって赤い靴下履いちゃうんでない?」

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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