「ええ!? なにそれ!? なんで葦呼ってば、そんな映画に出てくるみたいな特別な絆っぽいこと言うのっ!?」
「特別な絆じゃなくて。どこまでも同類なだけ」
「なにそれっ!?」
「あー。うえぇえ。うーん。もー」
うなりにうなって、葦呼がどうにかこうにか手探りの解説をし始めた。
「そもそも論から行くけど。あのね紫乃。人って大概、もっともらしい真実より、ひょっとしたらあるかもしれない真実の方が好きなのさ。あ・い・上・お、は『上』が『う』『え』で間違ってるって理解できるのに、粘土・六・塩・靴下・赤って言われたら、そういうこともあるかもって信じちゃうんだよ」
「ええ? まさか。ないない。そんな」
「でも紫乃だって、実際、今日の星座的ラッキーアイテムは赤い靴下ですって朝ニュースの占いで言われたら、そうかもって赤い靴下履いちゃうんでない?」
「あ。いやでも、それとこれとは、」
「それがこれだよ。同じ同じ。それでね、逆説的に、好きだったなら、真実じゃなくても構わないんだって―――真面目な人が真面目だって真実より、真面目な人が不真面目なことを仕出かしたって出鱈目の方が噂になるのは、そういうことで」
そこで、閑話休題といった風に、話がすげ替わる。
「んで。喫茶店で、あたしと紫乃と派手カラフルな美女がアサキングに対面した、あの時。あいつが正直に、あんたらどっちも女性として見てませんなんて言ったら、どうなってたと思う?」
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