「あのさ。もう甘えついでに訊いちゃうけど。麻祈さんって、その……嫌いなのかな。そういうの」
「どういうの?」
「その……オンナ濃度っていうか」
「パンチラ?」
「じゃなくて!」
「だよね。嫌いな奴いないよね。知らんけど」
「それでもなくて! ……オンナ攻め。料理してもらうのとか」
「うーーーーーーーん」
盛大にうめいてから、葦呼が呟いた。
「自分の好き嫌いより、それこそ面倒臭いかどうかってのが重要なんじゃないかなあ。あいつキングだから」
「どういうこと?」
「相手に好かれるのは心地いい。けど、好きだからって見当違いのことをされると、見当違いなことをされて嫌だなぁって感情・相手は好意からそれをしてくれているのにそう思ってしまったという己の悪業・思ってしまったのに相手に言いそびれた身の内の罪悪感が三レンチャンで頭にインプットされて、しかも見当違いの挙句に残されたケシズミを成果として褒めてやって、あとで気付かれないようこっそり後始末までしなきゃならない。この折り合いをつける面倒臭さが問題ってこと」
「つまり。料理だって、見当違いでなかったら嬉しいってことだね?」
「そりゃそうだよ。自分の得意料理と相手の好物のソリがあわないことに気付きもしないで、褒められるに違いない得意料理を自慢するためだけに作り続けるんなら、そりゃ単なる自己愛。ひけらかし。前の、派手カラフルな美女のコック版」
「分かった……相手のことをじっくり見て、ちゃんと相手の好物を知った上で、自分の得意料理とするなり、得意料理とコラボさせるなりしたらいいってことだね。分かった」
と。
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