「―――きっと、麻祈さんだから、わたしが追いつこうとしてることに気付いてくれんだろうなって思えるからさ」
「いや気付くとは思うよ。あいつキングだし。でも、縦(よ)しんば気付かれでもしたら、もう紫乃は、追いつけないでいられないでしょ? 頑張り続けるしかないよ?」
「うん」
「だったら、」
「うん」
「だから、」
「うん」
「……そんでも、ずっと追いかけんの?」
「うん。わたし、頑張ることは出来るから」
そして、これだって断片にすぎないのだろうが。紫乃は余計なことをまで言ってしまっていた。
「それにね、きっと、それは大変だけど―――……辛くはないんじゃないかな。麻祈さんは、きっとわたしに気付いたら、それとなく待っててくれる気がする。ひとりで行けるのに、行ったところで構わないのに、ついてこようとしてるわたしを待っていてくれるんだろうなって。それを疑えないんだよね」
言っているうちに気恥ずかしさが勝り、紫乃は語尾を濁らせた。そうすると、気付かざるを得ない……葦呼が口を噤んでしまったのも、あまりの馬鹿馬鹿しさに付き合い切れなくなってのことではなく、もっと神妙な部分から物事を考えたせいだろうと―――そう思えた。今は。
その予想を裏切らない静まり返った声音で、葦呼が告げてくる。
「紫乃」
「うん」
「あたしからも話したいことが出来たんだけど」
「うん」
「おそらくそれは、紫乃が最後まで先送りにしていた質問と同じ」
「うん」
「求婚について」
「……うん」
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