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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「そだね。あたしにとっては、偶像(アイドル)かな。今の日本のテレビ用語より、原題に近いけど」

「へー。どんな奴? かわいー? カッコいー? イケメン?」

「妖怪」

「けったいなフカシこくなよ(Yeah right! No kidding!)!」

「ちょっとちょっと。どんどん地が出てるよ。いくらなんでもベロが現地過ぎるよ。橋元先生に聞かれたら泣き付かれるじゃん。あたしが。冗談じゃないってぇの」

「よりにもよってお前がそれ言うか(Ditto, ditto! Tiresome muggins!)! ええいやだっておま、つい……ちゅーか。タイプが妖怪って。おま」

「いや。好きになったのが妖怪だっただけだから。妖怪が好きなんじゃないから。ここ重要」

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「へー。ちなみにだけど。映画俳優なら、好きな女性のタイプは?」

「オゥダゥリゥィ・ヘッパワァゥムン」

「うあ。この二秒半で日本っぽくやや英語的な発音した。やるな帰国子女」

「言っとくけど、彼女の見てくれがどうこうじゃないぞ。確かに演技に妙味のある目鼻立ちが整った女だが、それ以上に、いい女だから好きなんだ。私物を詰めた荷物は生涯自分で持ったらしいし、各国を流転した境遇にも俺として感じ入るとこがある」

「だろね。あんたもユーラシア大陸を周回しながら育ったクチだもんね」

「……俺は産まれはアメリカだし、トータルして居座った期間が最長なのは中近東だけどな。ってェか、だったら、お前の男のタイプは? どーせ日本人なんか、ピンからキリまで一緒くた(much of a muchness)。もーいっそアイドル限定じゃなくて直球で言いやがれ、好きな野郎の名前。そら・来い(C’mon, Shoot,)、さん・はい(Hey presto!)、ぶっちゃけて(Let's Be Blunt!)!」

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「むう。だったら、イケメンは?」

「分かる。むしろそれは近代の造語だから分かりやすい。自分のタイプの好青年を、大衆に持て囃させるための宣伝文句だ。だから、若くて清潔で人好きする外聞を保っている男は、誰しもが誰かにとってのイケメンだ」

「そーいったスタンスからの分かり方なのね」

「え? 間違ってないだろ? 俺だってイケメンって言われたことあるんだし」

「間違ってないよ。うん。そのスタンスからすると、それは誤答ではない」

「だろう。きらりんこだって理解してる。照明設備だ。ふふふ」

「そっちは勝ち誇れるほどまるっとお見通しな正答かなぁ」

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「アイドル見たらいーじゃん。かわいーよ。カッコいーよ。きらりんこだよ」

「敢えてまで見たかねーよ。俺、日本人をつぶさに見分けられる眼球してねぇもの。日本のかわいーもカッコいーも分かんねぇもの」

「およ? 分かんないの?」

「分からん。正しく解説するなら、生粋ジャップが体得している『かわいー』『かっこいー』を俺自身が会得出来ている確証も自信も無い……俺が得手なのは、コーカソイドのそれだよ。俺はこっち系の顔の認知能が自然と刷り込まれて養われる生育環境になかったんだ。ついでに、これから改めて認知能を発育させる意欲も無い」

「なんで?」

「めんどい。俺は、和が得手じゃないんだ」

「和?」

「なんつーのかな。あやふやに中庸であることを保ったマジョリティーでいる美徳がまかり通っていることこそ自分たちの美点と思って疑わない、システマティックなポピュリズムかな。どうやら、かわいーってのは cute も sweet も charming も曖昧に含有した innocent 寄りの総体だし、カッコいーってのも土着の cool から日本っぽく意味を捏ねられて handsome も gentle も tough も dandy も―――場合によっては dirty すら―――曖昧に含有した adorable 寄りの総体と化しているってのは理解した。でもって、かわいーもカッコいーも、認識と用途に性差があることも理解した。そんで充分だ」

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. 気乗りしない議題を討議するのは無論のこと気乗りしないにせよ、そのことそのものは、やり慣れている作業ではある。麻祈と佐藤は、とかく早急に小杉と坂田を交えて話し合うべきだという点で一致していた。ただし、事の主犯格なのだから自分も最初からその場に参加すべきとする麻祈の主張に対して、佐藤は論駁(ろんぱく)を崩さなかった……少なくとも小杉の麻祈への好意は火を見るより明らかなのだから、その張本人を目の前に、彼女が赤裸々なトークするとは思えない。麻祈が加わるのは、せめて彼女が包み隠さず語りつくしたあとの方が望ましい。

「だからまずあんたは喫茶店で、あたしと背中合わせの席に隠れてスタンバって、聞き耳を立ててりゃいいと思う。んで、機を見て、こっちに登場すると。中身見えてきた(Get the picture?)?」

「Wow(わぁお。)! 真打ちっぽーい。緊張しまくってガタブルだぜ(I have a butterfly in my stomach!)! キメ顔こんなカンジ?」

 適当な角度に顔をずらして前髪を払ってみせるのだが、笑い出すべき佐藤はノータッチを決め込んだ。あろうことか、二皿目の厚焼き玉子をもふもふと頬張りながら、

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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