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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「しかも名前がダン・アサキとくりゃね」

「名前?」

「ええとね。紫乃。誰でもいいから、白色人種を思い浮かべて。背と鼻が高い、青い目をした、色白の。―――いい? 思い浮かんだ?」

「うん」

「その名はボンジュール山田」

 ぶーと音を立てて、紫乃は吹き出した。

「口を開けば、生粋の土佐弁」

「やめてよ葦呼。また吹いたでしょ」

 追撃してきたくせに、葦呼はしてやったりといった感も無い。淡泊に納得するだけだ。

「だろね」

「なんなの? 麻祈さんの話をしてたんでしょ?」

「してるさ。そいつ麻祈だもん」

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.沈黙。

 説明を錬るためのそれでなく、こちらの様子を吟味するかのような葦呼のそれに、紫乃は目を白黒させるしか出来なかった。

「ど、ういうこと? それ」

「あいつね。日本の大棚企業に飼われた技術屋の父親にくっついて生きてきたから、生まれこそ欧米だけど、中近東から欧州まで転々としながら、長期休暇の時に都合がつきゃあ兄と妹が住んでる日本の実家に滞在ってサイクルで育ってきてんの。手に負えない出来損ないなら完璧に日本へバトンタッチされたんだろうけど、色々そつなくこなせちゃったもんだから、親父も甘えが出てあいつを手放さなかったみたく」

「甘え?」

「あいつ、骨格からして母親似っぽいもん。ケイイチさんって、父親を名前で呼んでたし。あのモロ出しの標準語とちぐはぐする『俺』自称だって、日本に住み着いてから顰蹙買って『わたし』自称を無理矢理ひん曲げたっぽいし。知んないけど」

「……お母さんがわりだったってこと?」

「知んないってばー。んなセンチメンタルなこと抜きに、安心材料として子どものひとりくらい手元に残したかっただけかも。家に帰れば父親としての地位と統制を取り戻せるってシステムは、規律を乱さないためにも重要だろーしー」

 急にうだうだと語尾を濁らせて、葦呼は閑話休題とばかり話を戻した。

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「ううん。ふたつみっつ奥にあるのを買う」

「どして?」

「どうしてって……手前のって、誰が触って棚に戻したか、分かったものじゃないし」

「袋入りだよ?」

「それでも、さぁ」

「だよね。だったら、誰かが目の前で触って、棚に戻したヤツは買える?」

「いやいや無理無理」

「それが日本人じゃなかったとしたら?」

「きっともっと無理」

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.   どこまでも理解の糸口が得られない。

 素っ頓狂な問いかけに、紫乃はありのまま答えるしかなかった。

「あたしだって、今だって日本人だよ?」

「うーん。本気で分かってない」

(なによ)

 棘の無い言葉に、だからこそ引っ掛かる。葦呼はいつだって邪気無く、紫乃の邪まな奥底を突いてくる―――他意も無く、悪意も無く、だからこそ他意と悪意を勘繰らずにおれない凡人のことなど及びもつかない。自分は、そのくらいしか分からないのに!

(駄目だ、それじゃ)

 紫乃は、ぐっと吐息を呑み込んだ。

 それを、吐き出す頃には声に替えた。頭も下げる。

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.   目論見むなしく、剛速球かつ直球でホームランされた返事が、こうだ。

「体調だけで済んでるのは軽症な方だってばー。川北先生なんか点滴ブラさげながら診療して、帰る体力も洗濯してる暇も無いから、病院のベッドで寝てる間に看護師長がパンツ洗ってくれてたんだよ? あたしだってヒドい頃にゃあ、なんちゅーかこうネオな感じのウンゴロペレツモチルチルニャーニャとか思いつくもん。なにそれ? ネオなにそれ? 動植物? スベスベマンジュウガニとスベスベマンジュウダニっぽい系列で、ウンゴロペレツモチルチルニャーニャとウンゴロペレツモチルチルニびゃー!? ごじゃー! ぴー!」

 なに言ってんの。と思うと同時、紫乃は観念して、ことの全貌を白状することに決めた。

 話すと長くなりそうだったし、それよりも葦呼の磁気嵐の再発を懸念したため、その日はそれで終えてかけ直すことにすると、葦呼がこの日の夜を指定してきた。

 そして、その挙句が、この相槌というわけだ―――だろね。

「だろねって。どうして?」

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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