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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「とにかく。なにかを変えるためには、誰かが始めなければ。彼女に接するのはまだ荷が重いことだと承知していますが、それでもどうか、お願いします」

「分かりました。ちょっと社長に相談してみたいと思います。ことの発端は、社長からの電話でしたから」

「ええ。是非そうして戴けると、ありがたいです」

 そこで、会話が途絶える。

 そこに漂った沈黙の種類が、これから埋めるための虚無ではなく、埋める理由を失くすまで達した飽和であることを察する。頃合いだと認めざるを得ず、紫乃は電話口向こうの麻祈へとお礼をした。

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「対象者が意識を失っていたのも、坂田さんへの横暴も、ドラッグを使用した可能性をパージして考えるなら……おそらく病気に因るものが大きいかと思います。貧血の方ももちろんそうですが、それよりもPMDD―――生理前不機嫌障害、との名称が日本式疾患名なんですが。月経が開始する前にホルモンバランスが変動することに起因し、常軌を逸した粗暴な行動を取ったり、食欲が異様なまでに亢進したりするんです。あ。亢進って、通じますか? 意味」

 はいと返すと、良かった、ありがとうと挟んで、彼は続けた。

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. それは辛かったですね。言われて、悟る。

(わたし、こんなに辛かったんだ)

 とても悲しかったですね。そう言われて、頷く。

(わたし、こんなにも悲しかったんだ)

 やれたこと。出来たこと。頑張ったこと。全部が全部を否定され、詰(なじ)られ貶(けな)され謗(そし)られて、辛くて悲しかったのだ。そして、実際にその通りだと思えてしまったちっぽけな自分自身が、虚しくてどうしようもなかったのだ。

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「ケーニヒスベルクの橋」は、大昔に考えられた一筆書きの問題で、数学のグラフ理論の草分け的存在だ。

 むかしむかしの大昔、プロイセンという王国に、ケーニヒスベルクという都市があった。この都市はプレーゲル川を含む中州(なかす)にあって、ななつの橋が架かっていたんだ。

 そんなある時、町に住んでる奴が、こんな疑問を持った。

「どこから出発してもいいから、この町に架かるすべての橋を1度だけ渡って、元いた場所に帰って来れるだろうか?」

 大数学者オイラーは、この問いを(俺なりに簡単に噛み砕いて表現すれば)こう証明した。

「陸と橋をグラフ化した場合、この一筆書きが成功するためには、点から出る線の分岐数が奇数となるものが、2つ以下でなければならない」

 ……百聞は一見に如かず、だな。
 オイラーが言ってたのは、こーいうこった。

 まずはこの地図を、陸=点、橋=線、と置き換えてグラフにして、

 でもって、点から分かれた線の数を書き込んでみると、

 分岐点のすべてが奇数だ。この問いに解は存在しない―――つまり、ケーニヒスベルクの橋は渡り切ることは出来ない。イカサマしなけりゃな。

 イカサマってのは、「地面をどこまでも歩いて源泉を迂回する」「地面をどこまでも歩いて地図外にある他の橋を迂回する」などだ。

 いやー、数学ってエレガントー(すっきり)。

 ってなわけで、今回はここまで!


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「自分は医者の本懐として、」

 ―――自分の本質として、

「誰かの個人情報を、誰かに漏らしたりしません」

 ―――誰かを消耗してまで話していたいような、誰かなんて、いない。

「あなたを心配しています」

 ―――それは、まあ、真実だ。少なくとも、今まで口にしたどの言葉よりも、虚偽から外れている。鬱病が、どん底よりも浮き上がりかけの時期に自殺することが多いのは、統計的にも証(あか)されているのだから。

 向こうの世界で、坂田が泣き出すのが聞こえた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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