「いつもの紫乃だったら、品物もそうだけど、言葉でもちゃんとありがとうってお礼したいって動く場面だと思ったんだけどな。てことは今、いつもの紫乃じゃないんだね。てーか、見たとこ袋の中お礼状っぽいもんも入ってないから、これ買う前から、いつもの紫乃じゃなかったんだね。ああ、だから木曜日の電話も用件だけで、最近の調子どうとかいったいつもの四方山(よもやま)話が抜きだったのか。どうなの? あたし間違ってる? 紫乃」
いつもの紫乃。
それは評価。自分への評価。
上野からもされた。母にもされた。姉にもされた。上野からは去った。母はやりすごした。姉はあしらった。葦呼からのそれは、どうしようか?
―――どうなの? あたし間違ってる? 紫乃―――
「間違ってるよ」
紫乃は答えた。なにをどうだと言われても、なにも感じない。感じないから、変わりない。変わらない。こんな自分だ。いつだって。
そのまま正直に、首を否定の仕草に振る。
「ほら。いつだって、いつも通りで。わたし別に、なんでもないもの」
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