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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. そして、通話時間を確認しようと目の前に持ってきたその画面があっさりと切り替わり、夥しいメール受信数を表示してきた。機械的にその内容を把握し、機械的にどれだけか返信する。直後、百花繚乱の色を咲かせたオとヤとスとミとオヤスミ動画が、小杉から通達されてきた。

「休める意図ナッシングだろコレ」

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. どこかもそもそした、はっきりしない口調―――泣き疲れて半分眠っているのだろう―――で、坂田が付け加えてきた。

「ごめんなさい……こんなに聞いて貰えたけど。それでも、もしかしたら、」

 と、一拍の躊躇を挟んで、

「また……頼ってもいいですか……」

「もちろんです。あなたさえ俺でよければ、いくらでも」

 麻祈は、そう応じた。若い医者は頼り甲斐がないと倦厭されることも多いのだが、彼女は年齢が近い方が気さくになれるらしい。願ったり叶ったりだ。とりあえず、今のところは。


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. あなたの今の状態には名称が存在し、名称が存在するものには、手立てを講ずることが出来る……暗闇の中に魔物を妄想することで無数の逸話を捏造し、暗黒のもたらす生物的恐怖を理知的に埋め尽くして駆逐したように。その大勢と同じく、あなたも乗り越えていける。望むならば叶う。それを教えなければならない。彼女はそれを知らないのだから。知っている自分が教えることで、彼女が変わることが出来るのなら―――

(きっと俺はまた、より人でなしへと近づくんだ)

 そう思う。

 思うだけだ。麻祈は、坂田へと接し続けた。

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. 心理には深層と表層があると、とある学者は分析した。深層こそが表層へと伝播し、身体的・心理的な波紋となって表出するのだと。

 詳細はともかく、麻祈は逆説的にそれに得心し、役立ててもいた……つまりは、表面的にでも身体的・心理的な異変が失われてくれたなら、深層も多少は安定したと見ていいだろう、と。それこそ、その異変が失われた静けさが、完治しての平穏なのか、吐露しきっての寂寞なのかは問題ではない―――後者ならば、いつか前者となることを目標に、自分が付き合っていけばいいだけのことだ。人間は赤の他人にはなから深層など見せはしないし、その当人でさえ把握しかねている部分がほとんどなのだから、最初に大元の深層から安定させようとするドラスティックな姿勢は危険だというのもある。名言を借りるなら、底なし沼の深遠を覗いている時、己は深遠から覗き込まれているのだから。

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. その余裕からか、彼の優しさにつけ込んでいるようで今更に居心地が悪くなった紫乃は、途端に歯切れ悪くなるのを感じながらも、どうにか最後にそれを言葉にした。

「おやすみなさい。さよなら」

「ありがとうございました。さようなら。おやすみなさい」

 そう口にしたのに、彼は電話を切らなかった。紫乃がそうするのを待ってくれている……いつだってそうだったから、今だって。

 紫乃は電話を切った。そしてそのまま、携帯電話の電源を落とした。今日はもう、誰とも話をしたくなかった。このまま電気を消して眠ろうと思う。目の腫れ具合を最小にするには、顔を洗うか濡れタオルで冷やすかした方がいいのに決まっていると、分かり切ってはいたけれど。

 思う。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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