. そして、通話時間を確認しようと目の前に持ってきたその画面があっさりと切り替わり、夥しいメール受信数を表示してきた。機械的にその内容を把握し、機械的にどれだけか返信する。直後、百花繚乱の色を咲かせたオとヤとスとミとオヤスミ動画が、小杉から通達されてきた。
「休める意図ナッシングだろコレ」
.
呟いてから、呟くのに必要とされる以上の息をつき、麻祈は椅子から立ち上がった。すぐそこの冷蔵庫から、ハイボール缶を取り出す。水割りやロックよりも、炭酸を喉に通したい気分だった。蓋を開けて飲み込むと、不慣れな気泡に、咽頭が奇妙な音をくぐもらせる。ぐう。
(―――ああ。だからか。つい余計なことをしたのは)
ぐう。
それを思い出す。押入れに隠れて、喉だけを鳴らしていた実妹。
自分は幾つだったろう? お子ちゃま上がり(preteen)だったか。畳に体育座りしつつ、片耳を襖にくっつけては眼差しで壁時計の分針を追い駆けて、ゆゆの奴さっさと腹を鳴らせばいいのにと思っていた。そうすれば、この場でわざとらしくこの手にある固焼き煎餅をバリバリと噛み砕いて食べてやるのに。跳び出して来ないでいられないだろうに。と。
結局フェニックスの餌食となった挙句、煎餅まで横取りされて終幕を迎えた少年群像のひとつへと、麻祈は肩を落とした。
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