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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「お。グッドタイミング」

 のほほんと上野の裏から言ってくる社長だが、紫乃は鼻白んで歩を止めていた。わけが分からない。わけが分からない、そのうちに。

「この間は、本当に、すいませんでした」

 上野が紫乃へ、深々と頭を下げた。そして、涙に翳(かげ)る謝罪を、しおらしく紡いでいく。

.
「助けてくれようとした坂田さんに、非道いことを言ってすいませんでした。信じてもらえないとは思いますが、わたし、気がおかしかったんです……」

 そこで彼女は、言葉を詰まらせた。それは容易く言い訳へと逃げるのでないからこそ生じた、踏み出す一歩のためのひと踏ん張りだと、紫乃には思えた。

(挫けないように。頑張って)

 それは、誰にでも出来ること。上野も―――自分も。

 紫乃は、上野を待った。麻祈のことを思い出していた。

「もうすぐちゃんと雇ってもらえるって思えば思うほど、いつも以上におかしくなるのが分かっていて、分かっているのにどうにもできなくて、本当に身体までおかしかったから、手頃なところにいた坂田さんに、それを八つ当たりしてしまったんです。本当に、申し訳ありません……本当に……」

「上野さん」

 低頭する上野に歩み寄り、そっと彼女の肩に手を置く。上野は通電したかのように、びくりと身体を震わせたが、硬直したまま顔を上げない。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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