. どこかもそもそした、はっきりしない口調―――泣き疲れて半分眠っているのだろう―――で、坂田が付け加えてきた。
「ごめんなさい……こんなに聞いて貰えたけど。それでも、もしかしたら、」
と、一拍の躊躇を挟んで、
「また……頼ってもいいですか……」
「もちろんです。あなたさえ俺でよければ、いくらでも」
麻祈は、そう応じた。若い医者は頼り甲斐がないと倦厭されることも多いのだが、彼女は年齢が近い方が気さくになれるらしい。願ったり叶ったりだ。とりあえず、今のところは。
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(問題は今後だな。悪化するようなら、また考えないと。この辺で、俺くらいの歳した、腕のいいメンタル屋か……)
なんのせ畑違いなので、察しがつかないところだ。まあ麻祈の経験則からすると、このまま介入を誤らなければ自ら好転していくような気がしていたから、そういった医院を探すのは、強いて急がずともよい案件だろう。
まだなにやら言いたげな坂田が、それでも、最後に口にした。
「おやすみなさい。さよなら」
「ありがとうございました。さようなら。おやすみなさい」
相手から通話を切った音を確認し、こちらも電話を切る。
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