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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. それから二言三言と会話を交わして、佐藤と別れた。去り際、その茶会を切っ掛けにはまった喫茶店で購入した、うぐいす餡ラテと塩抹茶海老カツベーグルサンドを食べなきゃとか言っていた。なんの罰ゲームかと思ったが、見送った佐藤の足つきを観察するに、気が重い行為ではないらしい。

 こちらは、そうもいかないが―――麻祈は改めて、ひととおり紙袋の中を探ってみた。しかし、メッセージカードのようなものはサルベージされなかったし、包装紙もまっさらで、手書きの文字などひとつも記されていない。

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. 危急の事態が発生し、かつそれに適応することが出来なかった場合、本当にそんな何事などなかったかのように―――あるいはその何事かなど難なくこなせたかのように―――過剰に今までの日常生活を遵守しようとする。それは、精神分析学ではありふれた、再適応までのメカニズムだ。麻祈へと通報せざるをえなかった出来事の直後だけに、なおのこと自分の中で容疑が固化してしまう。

 そうなると確かめずにおれず、であれば、やはり佐藤を問い質すしかない。坂田へのそれが杞憂に過ぎないとの証言を得んがために、麻祈は口を開いた。

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「元気? ハッスル?」

「じゃねえの? 風邪でもひいた?」

 当然もちろんと返ってくると思っての問いかけに想定外の反応をされて、麻祈は椅子の背から身体を起こした。

 こちらと違って半袖の白衣を着た佐藤は、手先の動きが分かりやすい。虚空でキーボードを操作するような手つきをした。胸奥にて、坂田紫乃の電子カルテを開いているらしい。そこにどのような記載があったものか、彼女はいまいち煮え切らないような悩み顔で、

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. 触らぬ神にたたり無しと、麻祈は贈答品へと心の矛先を向けた。それは、楽なことだった……返礼と聞いて無難に入浴セットやタオルの詰め合わせを予想していたのに、持ってみた紙袋の重量からして、そうではなかったからだ。目を眇めて袋の中を覗き込むと、そこにはラッピングされた長方形の箱がひとつ横たわっている。

 膝の上に袋を移して、手を突っ込んで包み紙を解くと、中からは小柄な瓶が出てきた。ひと目で分かる。限定品の米焼酎だった。ラベルは包装紙が邪魔して見えないが、この硝子瓶の純度の高い透き通るような薄氷(うすらい)色を見間違えるはずもない。既に先々月の給料日から、麻祈宅の冷蔵庫にて、殿上人として最高ランクに陣取っているのだから。

「俺の好み、なんで知ってるんだ? 坂田さん」

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「まあ、そうなるかな。お前に繋げる時もあるかもって合コン最後にテル番を渡しといたのが、違う意味で役に立って良かったよ。ってか、お前こそ、どうして坂田さんからの電話通じなかったんだ?」

「図書館で電源切ってたから」

「つけとけよ。映画の上映中じゃあるまいに」

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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