. 触らぬ神にたたり無しと、麻祈は贈答品へと心の矛先を向けた。それは、楽なことだった……返礼と聞いて無難に入浴セットやタオルの詰め合わせを予想していたのに、持ってみた紙袋の重量からして、そうではなかったからだ。目を眇めて袋の中を覗き込むと、そこにはラッピングされた長方形の箱がひとつ横たわっている。
膝の上に袋を移して、手を突っ込んで包み紙を解くと、中からは小柄な瓶が出てきた。ひと目で分かる。限定品の米焼酎だった。ラベルは包装紙が邪魔して見えないが、この硝子瓶の純度の高い透き通るような薄氷(うすらい)色を見間違えるはずもない。既に先々月の給料日から、麻祈宅の冷蔵庫にて、殿上人として最高ランクに陣取っているのだから。
「俺の好み、なんで知ってるんだ? 坂田さん」
.
釈然とせずひとりごちると、佐藤が肩を竦めた。
「合コンでそんな話でも出たんでしょ」
「え? いや。そうだったかな。知んねぇ(Dunno)。でも、女ってそんな細かいことまで覚えてるもんなの?」
「女ってか、紫乃が覚えてるタイプなの。あたしも誕生日のたびメール来て驚くもん」
「ふーん。声聞いたの、合コンの時以来だったけど。えらいハッスルしてたなぁ。茶ぁしばいた時も元気してた? 彼女」
一拍。
そして佐藤は、首を捻る。
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