.襟足を伝う水が痒い。水は汗かも分からない。バスタオルを洗濯機に投げ込んで、洗面化粧台から取り上げたフェイスタオルをうなじから前にひっかける。スリッパをつっかけた素足を玄関までずるぺたと進めると、それを運動靴に交換して、鍵を開けた玄関扉を押しのけた。
のだが。十センチ開いても、二十センチ開いても、誰もいない。ついに半歩ほど外に出る。
「あア(Ah?)? ンだよ(Jesus,)。いねぇし。外(Nobody's outside)―――」
「にゃああああぁぁ!?」
舌打ち混じりの毒つきが、裏返った悲鳴に叩き潰された。
矢先、そのドアの向こうから、人影が跳びついてくる。日本で急襲を受けた不幸にまずぎょっとして、そうしてくる人物の正体に、重ね重ねぎょっとした。
「うわ(Wow,)、 さかた―――」
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