.よく聞こえなかったようだ。きちんと言う。
「せんたくかご(Laundry basket)」
「せん(Laun)―――?」
「そう(Yeah)」
会話が途切れた。
とりあえず、答えるものには答え終えたので、体勢を戻して発掘を再開する。
そして、靴下の相棒が見つかった頃。さすがに沈黙が続いていることに違和感を感じて、麻祈は屈身したまま、肩越しにもう一度坂田を返り見た。彼女はなにやら当惑した面持ちで、こちらと洗濯物に視線を行き来させているが。
つられて、姿勢を戻した麻祈も、手元を見やる。いつも通りの洗濯物だ。洗いざらしで、乾いてはこの箱に取り込まれて、割と余裕がある時は畳まれる。余裕がない時は箱にすら入らずサンルームに干されっぱなしであり、割と余裕がない日だと、取り込まれはするがそれだけだ。つまりは、昨日の今日で、洗濯籠に山となった今の状態だ。
疑問など差し挟む余地もないのに、坂田の様子はそれへの反駁を仄めかす。だけ。
(うぜえ。Laun? って……なにが不思議なんだ? 見て分かるだろ。洗濯物(Laundry)だらけだろうよこれ。それともbasketが気に食わねーのかよ。じゃあboxでもhamper でもいーよ。basketで疑問だってんならよ。疑問―――あ)
そこにきてやっと、英語を追いかけていたことに気付いた。
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