(行きたくないなぁ。合コンなんて。今日は、直接な知り合いもいないみたいだし)
それでも律儀にネックレスの位置を整えずにいられない己の指を恨めしく思いながら、紫乃はゆっくり目をしばたいた。いつもより丹念にマスカラを塗ったせいで、じくじくとした違和感が苛んできてやまない……まあそれは、こんな時間に化粧なんてし直したせいだろうけれど。―――こんな時間。
(いつもだったら、お風呂も終って、お母さんと話しながら夕ご飯食べてる頃だなぁ。お姉ちゃんも、そろそろ帰ってくるかも)
紫乃は、すぐそこのベッドの上にある鞄から、タッチパネル式の携帯電話を取り上げた。液晶画面に示された時間を見て、ちらと壁向こうにある姉の部屋の気配を探り―――途端、手元のそれが穏やかなグラデーションとメロディを発して、音声着信を告げてきた。そこにある名前は、佐藤葦呼(さとういこ)。旧友と言うよりか、旧知の友だ。とんちじみた言い方だが。
通話をオンにして、耳に押し当てる。
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