「ジンナイさんは空き箱だから、容量ぱんぱんまで相手の入れたいものを納めては出してくれるし、条件が揃えば鳩だって取り出してみせる。アサキングは広辞苑である以前にキングだから広辞苑っぽくないキングっぷりを発揮してくれんじゃないかな、合コンでは。……だからこそ空き箱にぱっこりハマってくれちゃうのがバレて目ぇつけられちゃうんだっつの。ったくもー、あのキングめぇ」
「最後らへんが不平なのしか分からないんだけど?」
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「要は、ジンナイさんはあたしなんかよりももっと花が咲くよーな話をしたがるだろし、アサキングは同業者としか同業絡みの話なんてしないだろってこと」
「成る程ね。あーあ残念。ドクター・イコの活躍譚、楽しみだったのに」
そう呟く。ぬか喜びへの無念でなく、親友へのからかいを込めて。
それに気付いたのか、やはり葦呼の返事は、謝罪の気配にしょげかえっていた。
「ありがとね」
「いいっていいって。じゃ、本当にそろそろ出ないと」
「うん。じゃあね。夜道に気をつけるんだよ」
「お母さんか」
言って、電話を切る。
それから気付いた。
「陣内さんは分かるけど、アサキさんって浅木でいいのかな。朝木? ま、いっか。漢字なんて」
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