「ヨダレついてるか分かんねぇ残飯をあっため直して食うなんて、暖衣飽食な日本くんだりまで来てやることでもないだろ」
「うへーキング的。しかし平民にゃもったいない。ちょーだいな」
目が点になる。
麻祈は立ちんぼで、席についたままの佐藤を見ているしかなかった。
彼女は至極無邪気に、せりふ通りに包み隠さぬ動作で、麻祈の分の容器へと麻祈が残したものを没収していく。ブラウン過ぎるうま塩ナンコツ揚げ。背骨からボッキリいっているポテト三種盛り。味わえるのがドレッシングくらいのシーザーサラダ。噛まずに呑み下すのが相応しい茄子の中華餡かけは、持ち上げた皿を斜めにして汁気の一滴まで攫っていく。実際、箸先で残らずこそぎ取った。感嘆の手際だった。
遅れて、彼女が付言する。
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「もらうよ。あたし食べる。だから頂戴って。いいでしょ? いらないんでしょ?」
「あ。はい」
間抜けな応酬をしながら、麻祈は佐藤を見ていた。彼女は最後に容器へと輪ゴムをかけながら、口に箸を銜えている。中華餡をしゃぶっていた。
声が漏れる。
「なあ」
「うん?」
「やっぱ結婚しねえ? 俺ら」
彼女は―――
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