「こいつがイメージキャラクター。大きな頬袋に、ごはんを詰めて帰るのが特技のゲロン君。げろげーろ、平らげろん」
「この際だから言わせてもらうと。キャッチフレーズ(catchword)にお国訛りの駄洒落を盛り込む各県の連中は、自分たちと同じ性向の者にしかそれを好意的に受け取られないという点において、キャッチという本質を瓦解させていることに気付いていないのか?」
「気付いてないのは、ゴーサイン出した壮・老年連中だけだよ」
「郷土愛ゆえってか? まあ確かに、現代日本におけるナショナリズムの群雄割拠は、経済成長の過渡期を過ぎたゆえの貴腐状態がある以上は自然な流れだと理解するところではあるが」
「それもあるけど、それ以上に、ナルシズムに基づいた無鉄砲さかな。若い頃があって、歳をとった自分だからこそ、この発案がすべての世代を魅了するって信じてんのさ。アレだよ。ジェネギャプ。それに、ゆるキャラみたく、成功例は乏しいにしても成功したらめっけもんだし、失敗しても、それこそ自分と同じ性向の奴がきちんと傷を嘗めてくれるんだから損も無いしね。むしろ、いつか成功した日には、紆余曲折の神話の箔になるかもだし」
「とりあえずジェネギャプはジェネレーションギャップってのの略語として違う気がするんだが」
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「そーかなー。でもジェネギャにしたら怪獣じゃん。仕方ないなぁ怪獣でいいよ。でも今回だけだよ」
「そして妥協そっちか」
「怪獣ジェネギャ。最初はプチ悪事して戦隊レンジャーの気を引き、最後に巨大化して街をちょっとだけ踏み潰す。そして、変形合体したロボヒーローにそれ以上に街を踏み潰させた挙句、破壊ビームを放射させることに成功すんの。そして、我が町を蔑ろにされ、血に飢えし暴徒と化した市民の手によって、戦隊レンジャーが秘密基地から狩り出された挙句に八つ裂きにされるのをほくそ笑む、と。あの世から」
「かくなる上はそっちが目的かよ。怪獣」
「そりゃそうでしょ。怪獣に人を殺させるより、人に人を殺させた方が効率的だもん。怪獣より頭数あるし。頭数が揃うと強くなるし。ゾウ一頭よりアリの大群。戦法的にもオーソドックスじゃん」
「まあ、理には適っている」
「そしてジェネギャは、連綿と続くはずだった特攻兵の犠牲の連鎖を、我が身をもって断ち切った英雄として後生まで祀られる。ほら、不死の名誉(イモータリティ)まで付いてくる。死ぬような任務をあえて引き受けたんたから、これくらい考え抜いてるって」
「だな。かもな」
さすがに、麻祈が折伏(しゃくぶく)されるなか途中で、店員が戻ってきた。
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