「あ―――さき。なんて、」
とにかく。とにかく。ただひたすらに。
小さく喚(わめ)いていた。自分でも分かるほど不恰好な、みっともない震え声で。遮二無二に。
しょうがなかった。しょうがないじゃないか。そう思う。そうじゃないか。知らない、見えない、なんの先手も及ばない中を、死に物狂いで逃げ惑っているのだから。どれだけ震えていたところで、格好悪かったところで、みっともなかったところで、それをどうにも出来ないならそれを曝(さら)すしかないなんて在り得る筈も無いんだから駄
「目だ。駄目だ。駄目それは駄」
目だ駄目だ駄目だ駄目だそんなのが俺じゃ駄目だから駄
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「目だ。そんなの。駄目なのに。だから見」
るなよ見るなよぉそれを見ないで見られたら俺がこんなのだと知られたら? 知られたい? それを知りたいなんて知る筈ないんだから知らないでそれを知らないでいて。こんなのじゃない俺を知っているお前なんだから、だったらだからこそ、それなのにこんな俺を見つけてしまうお前はこんな俺だけは見ないでよ見ないで見ないで見ないでよ見ないで見
「て」
ほしいなんて見つけないで見つけないで見つけないでいて下さい。ませんか。ああ失礼、ませんでしょうか。でしたでしょうか。それを見る筈なんてある筈もないのかもしれないんだからさぁあえて見るもんでもありませんしねぇだから見て見る見見てほしいつもりがあ
「るなんて、駄目なんだから、って、決まってる・らしい、んだ、から。しさ……」
息が詰まる。だのに、声が詰まらない。喉が詰まってくれない。息がとまってくれない。息の根さえ。
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