「とりあえず、消化管から冷やして肺まで焼こう。ロックいくかロック」
「暑いなら、その長袖まくれば?」
佐藤が、麻祈のそれを指差した。
麻祈は片手をオカマラインにして頬へ添えたいつもの道化姿で、やはり哄笑しながら、彼女を常套句にてあしらった。
「おほほほほ。嫌だわオネエサマ。嫁入り前の乙女に素肌をさらしなさいなんて、はしたないコト勧めるもんじゃござぁませんわよ?」
「あんたね」
ぴしゃりと。
こめかみを強烈に引っぱたくような叱咤を、佐藤がくれてきた。
「さっきもそうだけど。どーせ明日からもずっとキングるんだから、あたししかいないこんな時までキングらなくたっていーじゃんよ。いくらなんでも食傷だっつの」
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黙り込む。しかない。なにを言われているのか分からないのだから。そうするしか。
ただ、脳の理解は及ばずとも、身体的には先程の体温の再燃を痛感していた。
当然だろう。彼女の目の険しさに誹(そし)りは無いにせよ、鋭い物言いだったから、本能が喧嘩を売られたと察知してしまったのだ。そうに違いない。であればこそ、売られた喧嘩は買わねばなるまい。彼女は陣内ではないのだから。
麻祈は佐藤を睨めつけながら、勢い良く、シャツの長袖をめくり上げた。左から。次に、右のそれに手をかけて―――
それを中断し、シャツの腹を掴む。
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