「エネルギー問題も解決に近づくのになー」
「原子力発電は、あんまし好きじゃないけどさー」
「あ。えんがちょ(Jinx!)!」
「こら。ちびっこみたいなことして茶々入れない。ちゃんと言う」
「へいへい。俺も原子力発電はあんまり好きじゃありませーん」
「人類を滅ぼすのは贅沢だと思うから、滅びて欲しくなかったら、背に腹は替えられないよねー」
「違いないねー」
「まああんたのことだから、そんなのより、あの大統一論がぎちっと固められちゃうことの方がワクワクすんだろねー」
唐突だった。わけも無く、全身の体感温度が上がったのを自覚したのは。
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図星をさされた。それだけなのに、辛いものを含んだかのように、顔面が一気に紅潮する。汗が出る。妙な事態に、妙な顔つきになる。それを佐藤が見ている―――常ならば、ここで麻祈がエスプリかシニカルを効かせた何らかの評言を冗句に堕すと知っているから、それを待っている。理不尽だ。不可解だ。ずるい。辛いものなら吐き出すことが出来るのに、口の中には舌しかない!
「―――あーあー。急に暑苦しくなってきた」
うなって、麻祈は佐藤から目をそらした。壁に貼られているメニューを見るためだ。ウイスキーがまだコップに残っていることは知っているが、それでもだ。
薄汚れた品書きへと、独り言を吐きかける。
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