.大雑把に、店舗の半分は書物ならび書斎に関連した雑貨屋で、残り半分は動画・音楽・ゲーム作品等のレンタル店である。扱う商品が違うので、同一店舗内とは言え、商売っ気も分かりやすく色を変えた。バックミュージックからもの静けさが目減りし、設置されたテレビによるコマーシャルも遠慮なしにけばけばしくなる。商品陳列棚も、格段に丈が伸びた。おそらく本屋と違って、小さな子ども本人が小銭だけ握り締めて駆け込んで来るところでないからだろう。ファミリーレストランのレジ下にある駄菓子コーナーと同じ公算だ……親が大人の目線の高さで大人しく用を済ませているうちに、下の段で子どもの物欲を掌握する。
映画のレトロジャンル区域を花魁道中してみるが、件の系列作品は見あたらなかった。店頭に設置されていたボックス型の検索システムを操作してみても、やはり該当作品は存在しない―――正確には、或繰る日のジェイデクバ・アーウレンの代表作『焼けたのは道化』をヤケタノハでサーチした途端、『妬けたの? ハート』とかいうエロビデオがトップに出てきて、タッチパネルに触れる気から萎えたのだが。
(……古本屋でも探すか?)
嘆息して、麻祈は額を揉んだ。
(でも、チェーン店じゃここと同じく望み薄だろうし、稀覯本まで置いてるモノホンの書店を探すのもなぁ……)
地元民でないのが、こういう時に悔やまれる。散策のための散策をしたことがなく、必要時に必用なものを調達する目的で行動するだけなので、網羅が後手に回るのだ。なんとなく、佐藤なら無目的にふわふわと散歩に出かけては、地元民よりコアなネタを―――それこそ七味唐辛子をスパイスとした柚子もみじ茶と味噌こんぶベーグル並みのそれを―――仕入れていそうだと思わないでもないが……
「そうだ(Eureka!)」
佐藤―――図書館!
佐藤ついでに閃いて、麻祈は思わず指先を打ち鳴らした。ぱちんと弾かれた手先の付け根、そこにある自動巻きの腕時計が、きゅみりと機構を巻く。
(そういやこないだ佐藤も図書館でジャイアー読んでたっつってたじゃん。その方が書店探すより早いや。平日じゃもうやってないだろうし、今度の休みにでも行ってみよ。うん)
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