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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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いつもそうだった。

 どうしよう。それを考えてしまって、動けなくなる。

 どのように動こうか思案しているのではない―――自分が動くことで、なにかとんでもない事態の引き金を引いてしまう気がして、その空恐ろしさに立ち竦んでしまうのだ。誰かの足を引っ張ったらどうしよう? 誰かの邪魔をしたら、どうすればいい?

 ごめんなさいと先走って謝罪するのが、いつしか癖になっていた。

「ほら。謝るくらいなら反省して次からしない」

 いつだって姉はこうだ。

「ぬぁーにシケってんの? んなことよりカラオケの料理に新顔入ったんだってー! 行くよねこれから?」

 これに肩タックルがつくのが、華蘭らしい。

「紫乃のそれ。原罪の観念から宗教色を抜いた感じ」

 葦呼らしい言葉は、分かったことがない。

 だから、今になっても考え続けているのもしれない。



「ただし、キリスト教と違って、あんたしか信者はいない。その呪文で救われるのは、あんただけ。教祖になるなら狂わないでね」

 ごめんなさい。

 今日までずっと、謝り続けている。

 口癖を焦げ付かせた唇はまるで消しゴムだと、他人事のように思う。

 噛んでも痛くない。噛み締めても味はない。ただ、用がある時に使って、無用なら顧みない。無いと困るし、汚れが気になれば拭き取るけれど。そんなもの。

 そんなものではなかったことを、今は知っている。

 落涙と嗚咽を、もろとも噛んだあの夜から。紫乃はそれを知ってしまっていた。

 そして、そのことに慣れていたことにさえ気付かずにいた。

 無知にも。無恥にすら。

 気付かないまま。今日まで来てしまった。

「ごめんなさい」

 そうやって、ひとつまたひとつと口癖を持て余しながら、紫乃は連日電話を聞く。華蘭から。華蘭から。葦呼から。華蘭から。

 ―――最後のそれは、このように、葦呼から。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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