「おっひさぁ! 紫乃! 元気?」
「うん。華蘭こそ元気そうね」
「まっさかぁ! 超へとへとだってぇのー。今週ヘヴィー過ぎぃー」
けらけらと笑い飛ばしてくる友人の声音に、こっそり安心する。怒声や悲鳴ではないということは、なんらかの事件に由来した井戸端会議をせずとも済むのだ―――感情豊かな華蘭に引きずられて、身につまされた逸話を土台にした凶夢に苛まれることもしばしばだから、正直なところありがたい。
「で? どうしたの? 葦呼との高校女子会にしては、時期外れじゃない?」
.
「それはまた今度で。あのさ。ちょっと訊きたいんだけど。こないだの合コン、そんな良かった?」
「こないだ?」
聞き返すと、期待が込められているのが十二分に伝わってくる躍動感が漲ったせりふが、紫乃の理解を後押ししてきた。
「ほら。冬の終わりくらいにさ。風見鶏のお店で、陣内さんをホストに、四対四でやったっしょ?」
「―――ああ。うんうん」
「ねー? そんな良かった?」
「……かな」
なんとも言えず、とりあえず服従しておく。困った時は、いつものことだ。
対する華蘭の食いつきは、ブラックバスを思わせる強力加減だった。まあ釣りなんかしたこともないけれど、多分この威力と迫力は太公望に言わせればそうなんだろう。そう判断できる。あまりのダイナミックさに、華蘭ががっと身を乗り出す風景さえ見えた気がした。
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