(どうしよう……あんな言い方したら、華蘭は絶対に都合のいいように考えるよ……口車に乗せられてるとか洗脳されてるとか騒ぎ立てられて、どんどん派手な噂になっちゃう。華蘭は悪気が無いから、今回だってそれを繰り返すよ。どうしよう……どうしよう……)
ベッドの上で身じろぎする。いっそ臭い物には蓋とばかり布団に包まって寝てしまいたいが、このままでは蓋を溢れて引火し大爆発すると予想がついている以上、なんらかの手を打って回避を講じなければならない。いつもこういった時は、巻き添えを食わないように華蘭を傍観する立場を決め込むばかりだった。咎めるとしても、苦笑するから察してくれと願うだけだった。それがどれだけ我が身可愛さからきた偽善だったかが、当事者となって、こんなにもよく分かる……
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(いいの。そんなの今はどうでもいいの。どうにかしなくちゃ。どうしよう。華蘭を止めるには、どうしよう。どうしたら、)
そうして。
連なっていく言葉の先に、紫乃は“見つけた”。
それに紫乃は、愕然と、自失する。
矢先に、電話が着信コールを演奏し出す。理性の消し飛んだ状態で相手も確認しないまま、紫乃は通信ボタンを押していた。葦呼がうなっていた。
「うおーい。紫乃おー。聞いてる? ねー。……あ。卵焼き以外、そこの空席んトコに寄せといてください。そのうちツレ来るんで。ありがと」
どこかの大衆食堂にいるらしい。店員への応答を済ませた彼女のせりふが、纏わりついてくる周囲の騒音を振り払いながら、こちらへとやってくる。
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