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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「よー。アサキング。ここ、ここ」

 その呼びかけと、へらへらと席から振られてくる手の合図に、麻祈も片手を軽く挙げた。加えて、五指のそれだけでなく、声を追従させる。

「よっす佐藤」

「よー。お疲れー」

「お疲れちゃーん」

 麻祈は、佐藤の正面の椅子に滑り込んだ。

 四人がけテーブルだったので、本は隣席に置く。連絡しておいた通り、彼女は注文を先に済ませておいてくれたようで、卓の上には麦・芋焼酎の水割り二杯と鰈(かれい)の山葵エンガワが並べられていた。そちらは麻祈用で、彼女の前には厚焼き玉子だ―――それと、なんの変哲も無い水。いつものことだが、佐藤は今日も飲まないつもりらしい。

.
案内の店員に礼を言って退散させ、ふたりはとりあえず乾杯した。

 麻祈があっさりと一杯目を飲み下す間に、廊下と間仕切りに店員が下げていったザク編み暖簾(のれん)の引っかかりを直していた佐藤が、声を上げる。

「もうちょっと遅れるかと思ってたけど、わりと早く開放されたじゃん。確か元谷先生が急にバカンス行っちゃって、てんやわんやだったんでしょ?」

「その通りだけど、それはそれ。どーにかなんとかなるの。そんな仕事のことよりも、」

 と、空になった一杯目をテーブルの端へ追いやって、麻祈は二杯目をちびちびやりつつ本を取り上げた。にたつくのを抑え切れていない自分の顔の横でぶら下げて、剽軽(ひょうきん)にほれほれと佐藤へ見せびらかす。そうして、焦らす厭らしさを冗談にしながら、

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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