「今回のオタク会は急止。それを楽しみにとっとかないと、やってられない事件が表沙汰になった」
「事件?」
「こないだの合コンのあと、あんたに頻繁にメール連絡してくる女の人いるよね?」
「いるよ」
質問の意図が不明だが、麻祈は答えた。小杉とのやり取りは、悪事でも秘め事でもないのだから。
重ねて、佐藤が訊いてくる。
「どんな人?」
「どんな人って。美女だ。生粋ジャップが言うところの」
「もうちょっと内面寄りも含めて表現すると?」
.
「だったら。派手カラフルな美女だ」
「派手カラフルとな」
「そうだ。メールも出で立ちも挙措(きょそ)もそんな感じで、しかもそれが自分に似合っていることに自覚的だから、遠慮なく派手カラフルでいる。敢えて言うならややアバンギャルド傾向ではあるものの、パーソナルなカスタマイズが時流を逸脱することはない。そんな美女だ」
プレゼンしつつ、虚空を眺める。脳裏にて写生した小杉のデフォルト属性に違和感を認めなかったので、特に修整も差し挟まず、麻祈は続けた。
「その人が、どうかしたのか?」
「あんたと付き合ってると吹聴してる」
「ああ。付き合ったぞ。買い物に。代打で」
「違う。付き合うの意味違う。男女として恋仲であることを前提とした交際があるって意味でだ。言うなれば、彼女は段とオツキアイしています(She’s going steady with Dan.)、だ」
時が止まる。
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