「返事無いけど、聞いてるつもりで話すよ。ぶっちゃけ、なんのこっちゃ良く分からんのだけどー。言うだけ言われて切られたし。とにかく今、華蘭がぶっぱなしてきたマシンガンは、うちらの純真無垢かつ清楚なプリンセスに魔の手を掛けんとする淫魔のクソ―――長いので以下割愛―――ドクターを合コンに手引きしたのは貴様かーって、弾丸だったんだけど。あのさぁ。アサキング、クソなんちゃらドクターだったの? 紫乃にとって」
「ふざけないで!」
とにかく、紫乃は叫んだ。
だけで終わらず、叫び続けていた。
「そんなこと言う葦呼なんて最低! 大っ嫌い! 麻祈さんの友達でも、嫌いになってやるんだからア!!」
そして、携帯電話をベッドのマットにねじ伏せる。
.
そうしてしまったら、もう“それ以外に直視するものはない”。どうしたらいい?―――その先に見つけた、答えを。
ただしそれは、“どうしたら”への答えではなかった。
(最低なのは、)
葦呼。では、ない。華蘭でもない。
(わたしだ―――)
華蘭は、最初から間違っている。
自分は、純真でも無垢でも清楚でもない。麻祈と話をする大義名分を得るために疑問や質問をでっち上げては、いけしゃあしゃあと彼の心の温かさや余暇を貪ってきた。一秒でも長く話していたい。ほかの誰より、そうしていたい。それだけの悪行に治まらず、こんな波乱まで勃発させてしまった張本人だ。
(さいてい)
それなのに、こんなにもそれが分かってしまっても。今のこれを相談するためなら、彼に電話しても許されるんじゃないか。そんな思いつきを、手放せないでいる自分だから。
(さいってい……)
紫乃は頭を抱えて、身を縮めた。
そして今はただ力無く、床へ垂らしていた足をベッドの上まで引き上げて、体育座りした両膝へと額をこすり付ける。
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